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働き方改革
平成30年6月29日に参院本議会で「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が可決・成立しました。
同法案は、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法(パート法)、労働契約法、労働者派遣法の労働法の改正を行う法律の通称です。
イ「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」
ロ「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等」
ハ「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」
の3つを柱としており、一般的に最も企業に与えるインパクトが大きいといわれるものが、ロの「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等」の中の「労働時間に関する制度の見直し」です。労働基準法の労働時間に関する規定の修正等が含まれ、現在多くの企業がその対応に追われています。
ところが、農業はそもそも労働基準法の労働時間関係が適用除外であるため、この「労働時間に関する制度の見直し」は、直接的には大きな影響はないといっても誤りではないでしょう。ただし、「一定日数の年次有給休暇の確実な取得」が農業の事業体であっても取り組まなくてはならない項目です。
もう一つの大きな柱である「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」についてですが、農業では賃金を農作業担当と事務担当というように職務で分けているケースが多く、また正規も月給制ではなく、非正規と同じ時給制で支払っており、かつ大きな差を設けていないというケースも一般的であるため、「働き方改革」をもって労働条件や会社規定等の見直しを迫られる事業体も一般企業と比較すれば多くないと考えられます。
これらを踏まえ、現状、農業は国が推進する「働き方改革」の対応の必要性は他産業と比較すると高くない業種であるということが言えます。
しかし、法的義務がないからといって、例えば長時間労働が慢性化している事業体が労働時間の削減に取り組まなければ、労働条件が他業種一般企業との労働条件の差が広がる一方です。経営者は自発的に「働き方改革」を勉強し、取り入れるべきことは率先して取り入れる姿勢が求められるでしょう。
長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
(施行は、平成31年4月1日、但し中小企業における残業時間の上限規制の適用は令和2年4月1日、月60時間超の残業の割増賃金引き上げの適用は令和5年4月1日)
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
(施行日は令和2年4月1日(中小企業は令和3年4月1日))
「農業の「働き方改革」経営者向けガイド」の内容
農林水産省では、人口減少社会の到来等に伴う人手不足に対応するため、平成29年12月から平成30年3月まで、5回にわたり農業経営者や有識者をメンバーとする農業の「働き方改革」検討会を開催しました。
「働き方改革」検討会といっても、政府が提案していた「働き方改革関連法案」の内容に沿ったり、それを農業にあてはめたりしながら進行するなどというわけではなく、むしろ「働き方改革関連法案」とは直接的には関係のない独立した検討会といってよい内容でした。
具体的には、農業の「よりよい労働環境」の考え方や作り方等を農業者や専門家の知見やこれから農業を担う高校生の意見、また参考となる先進的な事例を見ながら複合的、総合的に検討しています。そして、この検討会の取りまとめともいえる「農業の「働き方改革」経営者向けガイド」が平成30年3月に公表されました。
この「農業の「働き方改革」経営者向けガイド」では、農業経営者が「働き方改革」に取り組む際のヒントとなるよう、先進的に取り組む経営者等との意見交換等を通じて得られた実例をもとに、何からどのように取り組むのかについて、3つのステージを設定しています。
「働き方改革」と「農業の働き方改革」の違い
国の「働き改革」のメインテーマは、「長時間労働」と「正規と非正規の社員間格差」の是正です。一方「農業の働き方改革」のメインテーマは、一言でいえば「先進的な経営を見習ってより良い雇用を推進しよう」というものです。見習うべきことの多い優良経営体が経営手法等をオープンにすることが農業全体の底上げに大きな効果があると考えられます。
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