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男女雇用機会均等法
労働基準法では、賃金についてのみ男女差別を禁止しています(労働基準法4条)。賃金以外の労働条件等については、男女雇用機会均等法で主に次のように定めています。
- 募集・採用において、性別を理由とする差別が禁止されています。
- 配置、昇進・昇格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別が禁止されています。
- 性別以外の事由を要件とする措置として、身長・体重・体力を募集・採用条件にすること、転勤経験があることを昇進要件とすることは、業務の遂行上特に必要である等でなければ、講じてはならないとしています。
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いを禁止しており、妊娠中及び出産後1年を経過しない女性労働者の解雇は、妊娠・出産が理由でないことを証明できない限り無効としています。
- セクシャルハラスメントの防止として、事業主に対して、男女を問わず、労働者の相談に応じ、適切に対処するために必要な体制の整備、その他の雇用管理上の措置義務を課しています。
- 妊産婦に対する健康配慮義務として、母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することが義務づけられています。
女性
労働基準法では、法律の制定当初からしばらく、女性保護規定を数多くおいていましたが、女性の社会進出の進行に伴い、母性保護を除く女性保護規定は段階的に撤廃されてきました。
平成18年の改正で「女性の坑内労働」が解禁され、保護の対象は基本的に妊産婦等のみとなり、妊産婦等に対して坑内労働や有害業務を禁じています。
産前産後の休業
産前産後とは、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)と産後8週間をいいます。
産前と産後の休暇の扱い方には違いがあります。産前の場合は本人の請求により与えられるのに対し、産後の場合は本人の請求の有無にかかわらず与えなければならず、産後8週間は、たとえ本人が希望しても就業させてはいけません。
ただし、出産後6週間を経過した女性が請求した場合で、その者について医師が支障ないと認めた業務に就かせることは差し支えありません。(労働基準法65条)
なお、産後8週間は、出産日の翌日から起算されます。また、出産日当日は産前に含まれ、出産予定日から出産日までの期間があれば、産前として扱われます。
一般的に産前産後の休業は無給の扱いですが、健康保険の被保険者には、産前産後の休業期間に対しては、健康保険から「出産手当金」(標準報酬日額の3分の2)が支給されます。
育児時間
生後満1年に達しない生児を育てる女性労働者は、休憩時間のほか、1日に2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができます(労働基準法67条1項)。
使用者はこの請求を拒むことはできませんが、この時間は無給として差し支えありません。
生理休暇
生理休暇は、単に生理日であるという理由で休暇を請求できるものではなく、生理痛等のために著しく就業が困難な状態にある場合にのみ請求ができるものです(労働基準法68条)。
また、使用者は、請求者が「就業が著しく困難な状態」にある限り、休暇の日数や時間を制限することはできません。なお、生理休暇は、無給としてさしつかえありません。
育児・介護休業法
育児・介護休業法は、仕事と家庭の両立支援を図るための法律です。パートタイム労働者等の有期雇用契約者については、次の条件を満たす場合は、この法律の休業の対象となります。(令和4年4月より)
<育児休業の場合>
子が1歳6か月(延長の場合は2歳)になるまでに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
<介護休業の場合>
介護休業の開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
育児休業
育児休業とは、労働者が1歳に満たない子を養育するための休業で、事業主は、労働者から申出があった場合は、子1人につき原則2回の育児休業(出生時育児休業を除く)を取得させなければなりません。出生時育児休業は、育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能です。
また、たとえば、希望しているものの保育所に入所できない場合など、子が1歳を超えても休業が必要と認められる場合には、子が1歳6か月(最長2歳)に達するまで休業できるほか、父母がともに育児休業を取得するなどの要件を満たした場合は、子が1歳2か月に達するまでの間に1年間の育児休業が取得できます。
介護休業
介護休業とは、労働者が介護を必要とする家族を介護するための法律で、事業主は、労働者から申出があった場合は、対象となる家族1人につき、常時介護を必要とする状態に至るごとに3回(通算して93日まで)介護休業を取得させなければなりません。
時間外労働・深夜労働の制限
小学校就学前の子を養育する労働者または家族介護を行う労働者から請求があった場合は、次の事項が制限されます。
- 1か月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせること
- 深夜(午後10時〜午前5時)労働をさせること
所定労働時間の短縮
イ 育児のための措置
事業主は、3歳に達するまでの子を養育する労働者に対し、労働者が希望すれば利用できる1日の所定労働時間を6時間とする措置を含む短時間勤務制度の設置を義務づけられています。
ロ 介護のための措置
事業主は、家族の介護を行う労働者に対して、要介護状態にある対象家族を介護する従業員が希望すれば利用できる次の措置を講ずることが義務づけられています。
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 介護サービス費用の助成、その他これに準ずる措置
所定外労働の免除
3歳に達するまでの子を養育する労働者から申出があった場合、その労働者を所定労働時間を超えて労働させることはできません。
子の看護休暇
小学校就学前の子を養育する労働者から申出があった場合、病気やケガの看護のための休暇として、小学校就学前の子が1人なら年5日、2人以上なら年10日の休暇を取得させなければなりません。
介護休暇
要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者から申出があった場合、要介護状態の対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日の休暇を取得させなければなりません。
休業・休暇中の賃金
育児休業や介護休業を取得する労働者の休業取得中の賃金については、無給とするのが一般的です。雇用保険の被保険者であれば、育児休業者に対しては「育児休業給付金」が介護休業者に対しては「介護休業給付金」が雇用保険から支給されます。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。