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税務調査の内容
税務調査官は、その対象期間の所得計算が正しく行われているか確認します。具体的には、収益および費⽤が当期に属するか前期または翌期に属するかという"期ズレ"の確認や、外注費等の内容、棚卸資産の計上漏れ、経費の中に事業と関係のないものが含まれている等の処理の妥当性を問われます。
消費税の処理についても課税区分別一覧表等を提出し、その処理に誤り等がないか確認が行われます。消費税軽減税率の導入に伴って経理処理の負担が増えていますが、適正な申告を行うためにはこれに対処していかなければなりません。
また、税務調査官は"仮想隠蔽行為"とされる"所得隠し"があるかを常に確認しています。売上の除外や証拠書類を破棄するなどして売上を隠蔽する場合や、架空契約書・架空領収書の作成などにより事実を仮装した場合などが該当します。
これら所得隠しが発覚すると"重加算税"の対象となり、併せて延滞税が課される額も大きくなります。最近の農業では消費者への直接販売など現金取引も増えていますので、現金売上の計上漏れがないよう日々の記帳をしっかり行っていく必要があります。
未販売の農産物(製品)や未収穫農産物(仕掛品)が期末時にある場合
期末時に未販売の農産物は、製品として繰越し、翌期の売上に対する原価とするため、期末時に製品として棚卸計上しない場合は、原価が過大に計上され修正申告の対象となります。
このため、例えば、期末までに出荷していた場合でも、検収基準等によって翌期の売上となる場合には、期末に棚卸として計上する必要があります。製品として計上する金額は原価計算によって求めますが、個人については収穫基準によって時価(生産者販売価格)で計上します。
また、期末時における未収穫農産物は、法人経営の場合、仕掛品として棚卸計上が必要です。実務的な負担の回避と棚卸の計上もれを防ぐ観点から、農閑期を期末とするなど、できるだけ棚卸計上をしなくても済むような決算⽉を選択しておくことが肝要です。
税務調査に耐えうる日常的な管理
税務調査に対応するためには、日々の経理処理をきっちり行っていくことが一番の近道です。申告間際になって作られた帳簿では正しく反映されないおそれがあります。また、帳簿の作成過程を明瞭にしておくことは、帳簿の信頼性の向上に繋がります。
例えば、売上代金を収受した場合に現金出納帳に記入することになりますが、農繫期等の理由で計上漏れがあった場合や、その現金を用いて経費の支払いを行い、経費の領収書は費用処理しているにもかかわらず、売上の計上を怠ってしまう場合など、日常的な処理を疎かにしていると意図的でなくても売上の計上漏れが起こりえます。
これに対処するには、売上金を、経費精算に用いず、そのまま通帳に預け入れることによって記録を残すことを奨励します。
また、実際に支払った以上の金額を通帳から引き出すことによって、使途不明の仮払金が残っている場合も考えられます。これに対処するには、現金出納帳をきっちりつけるか、少なくとも月に一度は経費精算を行って、精算額と同額を支払う等の処理行い、税務調査官に資金の流れを説明できる程の管理を行っていくことが望ましいのです。
チェックポイント
個人農業者がクレジットカードを用いて支払い行う場合、農業用と家事用の支払いが混在してしまうと、家事用のものが必要経費として処理されてしまう可能性があります。
これを避けるためには、農業用のクレジットカードと家事用のクレジットカードを明確に区別し、必要経費となる支払いについてのみ、農業用のクレジットカードで決済します。
また、最近のキャッシュレス化に伴う電子マネーによる支払増加には、国税当局も注目しています。これまではSuicaなどの交通系ICカードでの決済は文字通り交通費への支払いが主で、多額でない限りチャージした⾦額を明細なく"旅費交通費"として処理していましたが、今では多くの店舗で利⽤できるため、その利用に応じた適正な処理が必要です。
ICカードでの決済には経費とならない支払いが含まれている可能性があるため、利用明細を保存するなどして、適正な処理を行っておく必要があります。加えて、消費税の標準税率と軽減税率を区別して処理しなければなりません。
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