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地域の中の農業
農業は人間が生きていくために必要な食料を生み出す重要な産業です。同時に、土地を耕し、土地を守り、ひいては地域を守ります。地域の環境(農地の管理に付随して里山や河川などの手入れがなされ、治水や災害防止にも繋がります)や人と人との関係を保つ役割も果たしています。
また、都市部の農業においては、農地を維持することで、都市部の緑化や生態系の維持、防災環境の確保、都市住民へ新鮮で安全な生産物を供給するなどの役割を果たしています。
他方で、畜産業おいては家畜糞尿による水質汚濁・悪臭など、耕種農業においては農薬の飛散など、農業による周辺環境の汚染や負荷という問題も懸念されます。家畜糞尿から肥料を作る場合にも、野積み・素掘りといった簡素な保管方法ではなく、地上でも地下でも外部に流出しない適切な管理方法が必要です。
農薬散布にあたっては、飛散しにくい形状の農薬を使う、散布区域や風向きをよく確認するなどして周辺への影響を極力減らす必要があります。自社だけでなく周囲の安全や環境等に配慮した作業や経営体制を整え、地域と共生する経営が求められます。
農福連携
近年、大きく注目されているのが、農業と福祉の連携です。障害を持つ人による農作業や、何らかの理由で社会生活から離れた人の社会復帰の足掛かりとなったり、高齢者のコミュニケーションの場、幼児や児童の教育の場として農業が注目されています。
特に、自閉症(自閉症スペクトラム障害)は、同じ作業を高精度で長時間反復継続して行うことに非常に長けていることが多く、農作業と好相性であるとの声があります。
2019年3月に東京地方裁判所で出された重度障害者(自閉症)の労働能力についての裁判例に「特定の範囲・分野に限っては、高い集中力をもって障害者でない者と同等の、場合によっては障害者でない者よりも優れた稼働能力を発揮する蓋然性があった」旨の言及がなされています。従来は目を向けられにくかった企業戦力としての障害者雇用や活用が期待されます。
持続可能な開発目標(SDGs)
2015年の国際連合(国連)サミットにて「持続可能な開発目標」として17のゴールと169のターゲット」(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択されました。経済・社会・環境の面から、豊かさを追求しつつも環境を守りながら持続可能な社会を目指すための世界共通の目標です。
農業においては、農地・湿地などの適切な管理・活用による豊かさ、そこから導かれる食糧の安定供給などを中心に、SDGsが関わってきます。
農業経営は、身近には経営者や従業員の生活の糧をなすものですが、それと同時に、社会や環境を守るという大きな役割をも担っています。一人一人の農業者の日々の作業や経営が、社会全体への責任を果たしていくことになります。
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