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従業員の業務上のケガや病気
従業員が業務上ケガをしたり病気になったりした場合には、使用者(経営者)が補償をしなければならないことが労働基準法に定められています。
使用者の労災保険加入義務
この業務上のケガや病気についての損害は、使用者が労災保険に加入することで、国がその補償をしますので使用者はその分の責任を免れます。
農業の場合の労災保険の加入は、個人事業は従業員が5名未満の場合には任意加入ですが、従業員5名以上の個人事業や1人でも従業員を雇用している法人は加入が義務となっています。
なお、使用者である農業者自身は加入対象ではありませんが、「特別加入」という制度を利用することで、農業者自身も労災保険に加入することができます。農業者自身が特別加入をした場合には、従業員も加入しなければなりません。
民事上の損害賠償義務
もっとも、労災保険に加入していても、従業員のケガや病気による損害が労災補償や労災保険給付の金額を超える場合については、使用者が自らの負担で損害賠償をしなければならない可能性があります。
使用者には従業員に対する「安全配慮義務」があり、従業員が安全に業務を遂行できるよう配慮しなければなりません。
従業員の安全に対する配慮が不足し、義務に違反した場合に、従業員に労災補償等の金額を超える損害が生じた場合には、使用者がその賠償金の支払いを求められる可能性があります。
その他にも、不法行為責任や土地工作物責任などにより、同様に賠償金を支払わなければならない可能性もあります。
日常作業工程、ハウス等の施設、下記する従業員の精神面等の業務に関連する幅広い範囲の安全の点検・確保をすることが使用者には求められています。
精神疾患も業務上の病気になりうる
業務上のケガや病気というと、機械に巻き込まれてケガをした、粉塵を吸い込んで病気になったなどをイメージするかもしれません。
しかし、うつ病などの精神疾患でも業務上の病気として使用者が損害賠償責任を負う場合があります。
農業は他の産業と違い、労働基準法の「労働時間」「休憩」の規制を受けません。自然相手の仕事である農業の特徴から規制が緩められているものです。
しかし、人間の心と体は繋がっており、体が疲れると心が疲れることも多くあります。規制が緩いからといって、従業員の心身の状態に配慮しない勤務体制をとっていると、体調を崩す可能性があります。
良い労働条件・労働環境が使用者を守る
人手不足が叫ばれている中で、良い人材を確保するためには良い労働条件・労働環境が必要になります。従業員の安全を守るのは使用者の大切な役目です。そして、従業員の安全を守ることが使用者自身と経営を守ることに繋がります。
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