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ここでは農業経営のそれぞれの場面で活用できる代表的な補助事業、補助事業利用の注意点、補助事業の調べ方をご説明します。
I.代表的な補助事業
(1)設備投資・規模拡大
① 担い手を対象とした補助金
代表的なものは、「農地利用効率化等支援交付金」です。地域計画の早期実現に向けて、地域の中核となる担い手が経営改善に取り組む場合に必要な農業用機械・施設の導入を支援する制度です。
「農地利用効率化等支援交付金」のうち、担い手が対象となるのは、次の2つのタイプです。
- 地域農業構造転換支援タイプ
- 融資主体支援タイプ
地域農業構造転換支援タイプは、地域計画のうち目標地図に位置付けられた者が助成対象です。
また、事業実施地区は、地域計画が策定されている地域で、担い手への農地の目標集積率が一定の要件を満たすものに限ります。(該当するかどうかは市町村の農政担当部局へお問合わせください。)
補助率は、購入の場合は3/10以内、リースの場合はリース物件購入価格(税抜き)×3/7で、いずれも上限金額は1,500万円です。
融資主体支援タイプは、融資の活用が要件となっており、こちらも地域計画のうち目標地図に位置付けられた者が対象です。また、スマート農業、集約型農業経営、グリーン化については優先枠が設けられています。補助率は3/10以内で、上限金額は300万円(目標地図に位置付けられた者であって、目標年度の経営面積が一定基準以上となる場合は、600万円となります。
② 業種別の補助事業
水田・畑作、園芸、畜産、その他の品目で業種別の補助事業があります。
たとえば畜産では畜産クラスター事業(正式名称は「畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業」)があります。畜産クラスター事業とは、畜産農家をはじめ、行政やJA、飼料メーカーなどが協議会を設立して、収益性向上のために畜産クラスター計画を立て連携して取り組む事業です。
畜産クラスター計画における中心的な経営体では、施設整備および施設整備と紐づいた家畜導入や、機械の導入について支援を受けることができます。
施設整備については上限額の定め、家畜導入については補助単価の上限および上限頭数の定めがありますが、機械導入については上限金額や台数制限はありません。
また、施設整備については建設(補改修含む)が対象、家畜導入については貸付方式(一部購入方式)が対象、機械導入についてはリース方式または購入方式のいずれも対象です。補助率は、施設整備、家畜導入、機械導入すべて税抜価額の1/2以内です。
補助事業を活用できる中心的な経営体は、個人で畜産を営む場合、施設整備および家畜導入については (イ)3年以内の法人化計画を有する者、または(ロ)青色申告をしており、後継者を有する者若しくは経営者が原則45歳未満である者で、都道府県知事の特認を受けている者です。
一方、個人で畜産を営む場合の機械導入については、認定農業者であることが要件となります。法人の場合は、施設整備、家畜導入、機械導入いずれについても、農事組合法人、農地所有適格法人、農業を主たる事業として営む会社などが中心的な経営体となることができます。
③ 農地の整備
生産性向上のために地域の農地の集積・集約化に活用できる主な事業として、「機構集積協力金交付事業」があります。
担い手への農地集積・集約化を図るため、農地を貸したい人から農地を借り受け、必要に応じて条件整備などを行い、農地を必要とする人にまとまりのある形で転貸する事業を実施する公的な機関として農地中間管理機構があります。
この農地中間管理機構を活用して、地域の農地を集積・集約化することにより、地域集積協力金や集約化奨励金の交付を地域で受けることができます。
(2)人材確保・人材育成
人材確保に関する支援措置として、代表的なものに研修実施時に活用できる「雇用就農資金」があります。
「雇用就農資金」には、次の3つのタイプがあります。
① 雇用就農者育成・独立支援タイプ
② 新法人設立支援タイプ
③ 次世代経営者育成タイプ
①は就農希望者を雇用する際、農業就業又は独立就農に必要な技術や経営ノウハウ等の習得のために研修を実施する場合に、②は就農希望者を雇用し、その者が新たな農業法人を設立して独立就農するために研修を実施する場合に、③は雇用者を次世代経営者として育成するために、先進的な農業法人や異業種の法人に派遣して研修を実施する場合に、研修費用として助成を受けることができます。
①については年間最大60万円、最長4年間、②については年間最大120万円、最長4年間(3年目以降は最大60万円)、③については月最大10万円、最短3か月〜最長2年間となっています。
(3)経営所得の安定
代表的なものとして、経営所得安定対策(ゲタ・ナラシ対策)と水田活用の直接支払交付金があります。
経営所得安定対策の交付対象者は、認定農業者、集落営農、認定新規就農者で、規模は問いません。
このうち、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)は、麦、大豆等の恒常的なコスト割れを補填する制度です。交付単価の水準は「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」との差額分として出されており、交付単価は品質区分に応じて設定されています。
また、米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)は、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用馬鈴しょの当年産収入が標準的収入額を下回った場合、その差額の9割を補填金として交付するものです。補填を受けるには、加入申請後に積立金を納める必要があります。積立金は補填金の財源の一部となりますが、補填後の残額は翌年度へ繰り越されるため、掛け捨てではありません。
一方、水田活用の直接支払交付金の対象となるのは、販売目的で農作物を生産(耕作)する販売農家・集落営農です。「戦略作物助成」、「産地交付金」「畑地化促進助成」「都道府県連携型助成」の4つの支援内容があり、「戦略作物助成」では、水田を活用した麦や大豆、飼料作物、飼料用米等の生産に対して、作付面積を基本として交付金を受け取ることができます。
Ⅱ.補助事業利用の注意点
補助事業利用時の、補助対象財産の譲渡や貸付に関する注意点を説明します。
補助金を受けた機械施設等の譲渡や貸付をする場合は、原則として補助金を返還する必要があります。しかし、法人化後も引き続き経営に携わり、補助目的に沿って利用される場合は、補助金の返還は不要になることがあります。
補助金返還を不要にするためには、法人化のタイミングで申請が必要となるため、地方農政局や市町村へご相談ください。
Ⅲ.補助事業の調べ方
補助金などの情報収集には、農林水産省のホームページ内の「逆引き辞典」がおすすめです。「逆引き辞典」では、300件を超える補助事業について、利用者や目的、品目、事業年度で検索することができ、複数の補助事業を選んで詳細を一覧で比較してみることができます。
確認した情報で不明点がある場合や、個別に確認したいことがある場合には、各都道府県の農政課や農業経営相談所へ相談してみましょう。
農林水産省「逆引き辞典」
https://www.gyakubiki.maff.go.jp/appmaff/input?domain=M
当該コンテンツは、「アグリビジネス・ソリューションズ株式会社」の分析・調査に基づき作成されております。
