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課税売上高の増加に伴う手続き
軽減税率制度の導入後は、適用税率ごとに区分して委託者及び受託者の課税売上高や課税仕入高の計算を行うため、食料品など軽減税率対象の農産物(税率8%)について、委託販売手数料(税率10%)を控除した残額を委託者における課税売上げとすることが認められなくなり、課税売上げが増えることになります。
課税売上げが増えて課税売上高が1,000万円を超える場合、その翌々年(法人は翌々事業年度)において消費税の課税事業者となりますので、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を税務署に提出する必要があります。
また、課税売上高が5,000万円を超える場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していても、その翌々年(翌々事業年度)において簡易課税制度は適用されませんが、この場合の届出は不要です。
区分記載請求書への対応
農産物の委託販売では受託者が委託者に精算書などを交付することが一般的ですので、委託者が農業者の場合、JAなどの受託者がこれらの精算書について区分記載請求書に対応した様式に改めることになります。
一方、委託販売の受託者になっている農業法人などにおいては、精算書の様式を変更することになりますが、取引を受託販売から買取販売(消化仕入)に変更することで精算書の様式を簡素化する方法もあります。
受託販売から買取販売に変更することで委託者の課税売上高が減少しますので、委託者が簡易課税制度を選択している場合は納付税額が減少するメリットもあります。
農業者が農産物を直接販売する場合には、農業者が作成する領収書も軽減税率対応に変更する必要があります。但し書きに「□飲食料品等(軽減税率対象)」と印刷され、チェックを付けるだけで対応できる市販の領収書もあります。
適格請求書(インボイス)への対応
2023年10月以降は、区分記載請求書等の保存に代えて、適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります(インボイス制度)。
適格請求書発行事業者となるためには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受けます。
適格請求書等保存方式が導入される2023年10月から登録を受けるには、原則として、2023年3月までに登録申請書を提出する必要があります。
適格請求書発行事業者の申請受付・登録は、2021年10月から開始されます。
委託販売では、受託者が自己の名称と登録番号を記載した適格請求書を委託者に代わって交付できる「媒介者交付特例」が認められています。
媒介者交付特例では、委託者が受託者に対して、適格請求書発行事業者である旨の通知をする必要がありますので、委託者と受託者との間で基本契約書を作成し、これに委託者の登録番号を記載することになります。
消費税の課税事業者でなければ適格請求書発行事業者の登録を受けることはできませんが、取引から排除されたり消費税相当額の値引きを余儀なくされたりする懸念がある場合は、適格請求書発行事業者の登録を受けて消費税の課税事業者となる方法もあります。
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