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新規就農(個人が農業参入する場合)
[1] 農地法の許可を受ける方法
農地法に基づき農地の権利(所有権、地上権、永小作権、使用貸借による権利、賃借権など)を取得する場合には、農業委員会の許可を受けなければなりません。この許可がない売買・貸借等の契約は効力を生じません。
農地を取得するための要件
<基本の要件(権利の取得が所有権・賃借権等の使用収益権の場合)>
農地の借り手、買い手などが次の全ての要件を満たす必要があります。(注1)
① 全部効率利用要件 (注2)
全ての農地を効率的に利用し、耕作等の事業を行うこと(機械、労働力、技術等を適切に利用するための営農計画を持っていること)
-これら要素の判断は、農地取得者等の経営規模、作付作目等を踏まえて、総合的に勘案することとされています。また、判断に当たっては、いたずらに厳しく運用し、排他的な取扱をしないよう留意することとされています。-
(注2)本要件を判断する要素として、上述の機械、労働力、技術等に加えて、農作業に従事する者の配置状況、農業関係法令の遵守状況が追加されました(2024年 農地法施行令改正)。
② 農作業常時従事要件
必要な農作業に常時従事すること(農地の取得者が必要な農作業に常時従事(原則年間150日以上)すること)
③ 地域との調和要件
周辺の農地利用に支障を与えない利用方法であること(地域計画の達成、農地の集団化、農作業の効率化などに支障を生じないこと)
-周辺の農地利用に支障を生じる場合とは、法令で定める農地の集団化、農作業の効率化のほか、地域計画の達成に支障が生じる場合、地域ぐるみの水利調整に参加しない営農を行う場合、有機農業の取り組みが行われている地域で農薬を使用し、地域の無農薬栽培等が事実上困難となる場合等とされています。-
(注1)以前は、①〜③の要件の他に、下限面積要件(都府県では50アール以上、北海道では2ヘクタール以上)がありましたが、本要件は、新規就農の促進を図るなどの観点から2022年の農地法改正で廃止されました。
<解除条件付き貸借の要件 (権利の取得が「解除条件付き」による賃借権・使用貸借権の場合)>
この場合には、上記基本の要件②(農作業従事要件)を満たさない場合でも、①、③の基本要件に加えて、次の④、⑤を満たすときは、例外的に許可の対象となります。
④ 貸借契約書に解除条件が付されていること(解除条件:農地を適正に利用しない場合には貸借契約を解除する旨の条件が付されていること)
⑤ 地域の他の農業者と適切に役割分担し、継続的かつ安定的に農業経営が行われること(「適切な役割分担」:地域の話し合い活動や共同作業への参加など、「継続的かつ安定的な農業経営」:機械や労働力の十分な確保など)
なお、解除条件付き貸借で農地を借りた者は、許可を受けた農業委員会に毎事業年度の終了後3カ月以内に、農地の利用状況報告を提出する必要があります。
農業委員会への許可申請
許可申請は、原則、その農地の権利を取得しようとする者(借主、買主など)とその農地の権利を譲渡しようとする者(貸主、売主など)との共同申請が基本となります。申請に先立ち、貸主(売主)の協力も得て、申請に必要な書類(許可申請書及び必要な添付書類のほか営農計画書(提出を求められることが多い))を整えておきましょう。
なお、許可申請書の記載事項として、農作業に従事する者の配置状況、農業関係法令の遵守状況が新たに追加されたほか、所有権を取得しようとする者が個人の中長期在留者の場合は、国籍などに加えて、在留期間及び当該期間の満了の日等が追加されました(2024年 農地法施行規則改正)ので、ご留意ください。
農業委員会による許可は、基本、これらの書類等に基づき確認、判断されます。関係書類では、特に、「すべての農地を効率的に利用すること」、「必要な農作業の常時従事者であること」及び「周辺の農地利用に支障を与えない利用方法であること」、例外的許可にあっては解除条件付き貸借の要件をクリアしていることを具体的に明らかにする必要があります。
なお、農業委員会の許可申請手続きに係る標準事務処理期間(申請書の受付→許可書の交付)は、4週間とされています。
[2] 農地中間管理機構が作成する「農用地利用集積等促進計画」により権利を取得する方法
1 概要
この方法は、農地中間管理事業法に基づき、機構が作成し、都道府県知事が認可・公告する「農用地利用集積等促進計画」(注)によって農地の貸借等を行うものです。促進計画は、市町村が作成・公告した地域計画(目標地図を含む)の実現のため、機構が作成し、機構と出し手、機構と受け手の貸借関係をまとめた計画です。
機構が促進計画を作成するに当たっては、関係農業委員会の意見を聴くとともに、地域計画の区域内の農地については市町村、それ以外のものについては利害関係人の意見を聴き、その結果を付して、都道府県知事に認可を申請します。都道府県知事は、促進計画が要件を満たすときは、認可・公告します。この公告があったときは、促進計画に基づく権利の設定等の効力が生じます。この方法による権利移動については、農地法の許可は不要です。
(注)2022年の基盤強化促進法改正により、市町村が地域計画を定め、その実現を図るため機構を活用した農地の集積・集約化を図ることとされました。こうした中で、公的主体が関与する農地の権利設定手続きも見直され、市町村が作成する「農用地利用集積計画」は、2025年4月から機構が作成する「農用地利用集積等促進計画」に統合一本化されることとなりました。なお、2025年3月末日(それまでに地域計画が定められ公告されたときは、その公告の日の前日)までは、これに伴う経過措置として、市町村の「農用地利用集積計画」も引き続き活用可能とされていました。
2 機構から農地を貸借する手続き
① 賃借権の設定を受けたいときは、就農希望地の市町村(農業委員会)に(又は直接、機構に)申し出て、機構に農用地利用集積等促進計画を作成してもらうことになります。
② 機構は、地域計画の区域内の農用地等について促進計画を定める際には地域計画の達成に資するようにしなければならないとされています(基盤強化促進法22の5)。
したがって、機構が促進計画により、農地の賃借権の設定等を行う場合は、その受け手が地域計画(目標地図)に「農業を担う者」として位置付けられている(又は位置付けられる見込みがある)必要があります。
この確認等のためにも、先ず、市町村又は農業委員会に事前に相談されることが重要です。(地域計画は一度策定して終わりではなく、策定後も地域農業の実情に応じて随時 変更をしていくこととされています。)
③ 機構は、地域計画の実現のため、目標地図に即して、出し手・受け手の希望条件を踏まえて、貸借の開始時期、貸借の期間、借賃、借賃の支払い方法等について調整を行い、調整後、機構は促進計画を作成することとなります。(多くの機構は月1回以上の促進計画を作成するとしているなど、農業者の意向に即し柔軟な対応ができるようになっています。)
④ 機構は、促進計画の都道府県知事の認可・公告を経て、受け手に対して農地を貸し付けることとなります。公告があったときは、促進計画の定めるところにより賃借権の設定等がなされたものとみなされます。促進計画による権利の設定等に関しては、農地法第3条第1項の許可は不要です。
⑤ 機構から申請を受けた都道府県知事は、促進計画の認可に当たり、受け手については次の要件を満たしているかどうかをチェックすることとなります。
受け手要件としては次のことが定められています(中間管理事業法18 ⑤)
ア 賃借権設定等を受けた後、農地の全てについて効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められること
イ 耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すること
ウ アに規定する者が賃借権の設定等を受けた後に、イの農作業従事要件を満たさない場合は、次の要件を満たす必要があること
a 地域の他の農業者との適切な役割分担の下に継続的安定的な農業経営を行うと見込まれること
b 法人である場合には、業務を執行する役員又は重要な使用人の一人以上が耕作又は養畜の事業にすると見込まれること
⑥ 都道府県知事の認可要件に関連し、機構が促進計画を作成するに当たっては、受け手に次の書類の用意をお願いする場合もあります。ご理解ください。
ア 現に使用収益等している農地の利用状況
イ 耕作に必要な機械の所有の状況
ウ 耕作の事業に必要な農作業への従事状況等(受け手が個人の場合)
なお、これらの書類を省略できる場合もありますので、詳細は機構にお問い合わせください。
いずれにしても、農地を買ったり借りたりする場合は、就農予定の市町村又は農業委員会に事前にご相談ください。また、機構にも相談窓口が設置されていますので、お気軽にお問い合わせください。
当該コンテンツは、「一般社団法人 全国農業会議所」の分析に基づき作成されています。
