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1.農業経営体と農業従事者の動向
基幹的農業従事者数と新規就農者数(49歳以下)の推移

(1) 農業経営体数は減少傾向で推移
農業経営体数については、減少傾向で推移しており、2023年には前年に比べ4.7%減の92万9千経営体となりました。
このうち個人経営体は前年に比べ5.0%減少し88万9千経営体となった一方、団体経営体は前年に比べ1.5%増加し、4万1千経営体となっています。
なお、個人経営体のうち、主業経営体は19万1千経営体、準主業経営体は11万6千経営体、副業的経営体は58万2千経営体となっています(注)。
(注)
主業経営体:65歳未満の世帯員(年60日以上自営農業に従事)がいる農業所得が主の個人経営体
準主業経営体:65歳未満の世帯員(同上)がいる農外所得が主の個人経営体
副業的経営体:65歳未満の世帯員(同上)がいない個人経営体
(2) 基幹的農業従事者数は約20年間で半減
基幹的農業従事者(主に仕事として農業に従事している者)数は、2000年の240万人から2015年は175万7千人、2023年は116万4千人と、減少傾向にあり、この約20年間で半減しています(図参照)。
また、2023年の基幹的農業従事者の年齢構成をみると、65歳以上が82万4千人と全体の71%を占める一方、49歳以下の若年層の割合は11%となっています。
基幹的農業従事者の平均年齢は68.7歳(2015年は67.1歳)となっており、高齢化が進んでいます。
(3) 新規就農者数の動向
こうした中、将来の担い手として期待される49歳以下の新規就農者数は、近年1万8千人台で推移してきましたが、2022年は1万6,870人と2007年調査開始以降初めて1万7,000人を割り込み、2023年は1万5,890人(前年比5.8%減)となっています(図参照)。
49歳以下の新規就農者数を就業形態別に見ると、2023年は親元就農者(新規自営農業就農者)が6,420人(前年比1.2%減)、新規雇用就農者が6,880人(同10.8%減)、新規参入者は、2,590人(同2.3%減)となっています。
就業形態別の新規就農者の動向を見ると、2015年(平成27)に比し、親元就農者が約半減する一方、新規就農者に占める新規雇用就農者の割合が高まっています。この間、新規参入者数は、2,500人前後で維持されています。
2.農地・耕作放棄地の状況
農地面積の推移

(1) 農地面積の推移
① 農地面積はこの約60年間で30%の減
2023年の農地面積は、前年に比べ2万8千ha減少し、430万haとなりました(図参照)。
農地面積の長期的な推移を見ると、主に宅地等への転用と荒廃農地の発生等により、農地面積が最大であった1961年の609万haに比べこの約60年間で約179万ha減少(30%減)となっています。
改廃原因のうち、宅地等への転用は、高度経済成長期に大幅に増加するとともに、平成バブル前後の間にも増加が見られました。改廃原因の荒廃農地の状況については、次の通りです。
② 荒廃農地の発生
〔荒廃農地の新規発生と再生利用〕
2023年度に新たに発生した荒廃農地面積は2.5万haでした。一方、新たに再生利用された荒廃農地面積は1.0万haとなりました。
なお、2024年3月末時点における荒廃農地面積は25.7万ha、うち再生利用可能なものが9.4万ha(37%)、再生利用が困難と見込まれるものが16.3万ha となっています。
〔荒廃農地の発生原因〕
荒廃農地となる地形的理由では、「山あいや谷地田など、自然条件が悪い」の割合が高く、特に中山間地域ではその割合が高くなっています。
また、荒廃農地となる主体的理由としては、「高齢化、病気」が最も多く、次いで「労働力不足」、「不在村地主(地域内に居住していない)の増加」、「土地持ち非農家の増加」が多くなっています。
(2) 農地の有効利用の状況
① 農地総権利移動の推移
〔権利移動の中心は借地〕
農地の総権利移動面積(所有権移転と賃借権の設定等農地の総権利移動面積)は、2000年以降20万haから25万ha台で推移してきました。
2014年に発足した農地中間管理機構(以下「機構」という。)の活動本格化に伴い、2015年及び2016年は約9万ha増加して35万haに迫りましたが、それ以降は30万ha前後の横ばい傾向で推移し、2022年は、前年に比べ5.6%減少して28万2千haとなりました。
総権利移動面積を所有権移転と賃借権の設定等の構成比で見ると、賃借権の設定等割合は、2005年は78.1%、2016年は89.0%、2020年は85.2%、2022年は85.0%を占めるなど、農地の総権利移動の太宗を借地が占めています。
これを反映し、経営面積全体に借入が占める割合は、2005年が22.3%、2010年が29.3%、2015年が33.7%、2020年が38.9%と高まっています。
〔機構の借入・転貸面積の状況〕
農地の貸借の多くはこれまでは経営基盤強化法に基づく市町村が定める農用地利用集積計画による利用権設定によるものでしたが、最近は機構による賃借権の設定も増加してきています。
2023年度の機構の借入面積は前年度から7,318ha増加し、5万2,461haとなったほか、転貸面積は前年度から8,166ha増加し、6万1,581ha、そのうち新規就農面積は、4,560ha増加し、2万1,466haとなっています(注)。
(注) 機構発足時(2014年)〜2023年までの借入・転貸面積の状況を見ると、機構の借入面積は42万1,708haとなったほかは、転貸面積は41万7,829ha うち新規就農面積は、17万4,510haとなっています。
② 担い手への農地集積率の推移
担い手(認定農業者、集落営農等の担い手等)への農地集積率は、農地中間管理事業を創設した2014年4月以降上昇傾向にあり、2023年度は前年度に比べ、0.9%上昇し、60.4%となりました。
担い手への集積率を地域別に見ると、北海道、東北、北陸地方では高い一方、大都市を抱える地域(関東、東海、近畿)や中山間地域の占める割合が多い四国、中国地方では低い傾向にあります。
③ 農業経営の規模拡大
貸借を太宗とした農地の権利移動の進展に伴い、農業経営の規模拡大も進んでいます。
1農業経営体当たりの経営耕地面積は2024年に3.64haとなり、2015年の2.54haから43.3%増加(2005年の1.84haから1.98倍に拡大)しています。
地域別に見ると、北海道は26.51haから34.05ha(28.4%の増加)、都府県は1.82haから2.52ha(38.5%の増加)となっています。
④ 依然として大きな課題である農地の分散化
〔経営農地の分散化の状況〕
担い手の規模拡大は進んでいる一方で、その経営農地は分散(圃場が小さい、遠い)している状況にあります。
担い手(229経営体)に対する農水省調査(2013年度)によると、平均経営面積約18haが約32団地に分かれ、1団地の平均面積は0.6haと小さく、最も離れている農地間の距離は4.3kmとなっており、経営農地が分散している状況にあります。
T県N市の認定農業者の事例(水稲専作)によると、経営面積16.4haが、70箇所に分散(1か所当たり平均23a)し、最も離れている農地間の直線距離は5kmとなっています。
〔分散化による課題〕
経営農地が分散している場合、圃場間の移動時間の増加、機械の効率的利用が困難といった問題から、規模拡大をした場合のメリット(生産コスト低減効果)が十分生かせない状況にあります。さらに、拡大できる規模にも限界が生じます。
この分散・錯圃の解消の遅れは、規模拡大によるメリット発揮の支障となっており、この分散・錯圃の解消が依然として、大きな課題となっています。
3.新たな食料・農業・農村基本計画(2025年)における農地・人の位置付け
以上が、「農業従事者と農地の状況」ですが、ここからは、食料安全保障の確保等を基本理念とする改正基本法が2024年に制定され、これに基づく新たな食料・農業・農村基本計画が2025年に決定されたことから、食料生産基盤の要である人と農地が新たな基本計画において、どのように位置付けられているかを述べることとします。
- 2024年に食料・農業・農村基本法が改正されました。この改正は、従来の農村基本法に基づく政策全般にわたる検証及び評価並びに今後20年程度を見据えた課題の整理の上に行われました。
- 改正基本法に基づく新たな食料・農業・農村基本計画(以下「新たな基本計画」という。)が2025年4月11日閣議決定されました。新たな基本計画は、改正基本法の基本理念の実現に向けて具体的な施策を集中的に実施していくための方向付けを示したものです。
新たな基本計画
新たな基本計画では、改正基本法の基本理念として掲げた「食料安全保障の確保」、「環境と調和のとれた食料システムの確立」、「多面的機能の発揮」、「農業の持続的な発展」、「農村の振興」の実現に向けて、食料・農業及び農村に関する施策についての基本的方針、食料安全保障の動向に関する事項、食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標、食料・農業及び農村に関し、政府が講ずべき施策等を定めています。
新たな基本計画は、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるため、計画期間は5年間となっています。また、新たな基本計画では、計画の実効性を高めるため、食料安全保障の確保に関する目標(KPI)を設定し、施策の不断の見直しを行うこととされています。
食料自給率その他食料安全保障の確保に関する目標
新たな基本計画においては、平時からの食料安全保障を実現する観点から、食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるよう、食料自給率その他食料安全保障の確保に関する具体的な目標を設定しています。
このうち、食料自給力の確保(農地、人、技術等)に関しては、次の目標(2030年度)、KPIが設定されています。

食料自給力の確保に向け総合的かつ計画的に講ずべき施策
目標実現に向け、次の施策に取り組むこととします。
- 規模の大小や個人、法人等の経営形態にかかわらず、農業で生計を立てる担い手を育成・確保し、農地・水を確保するとともに、地域計画に基づき担い手への農地の集積・集約化を推進する。
- サスティナブルな農業構造の確保のため、親元就農や雇用就農の促進により、49歳以下の担い手を確保する。
- 生産コストの低減を図るため、農地の大区画化、情報通信環境の整備、スマート農業技術の導入、品種の育成、共同利用施設等の再編集約・合理化等を推進する。
主な耕種農業に関する農業構造の見通し
土地利用型作物は、2030年に経営体数が27万経営体と2020年対比で半減する見通しであり、経営規模の拡大を考慮せず試算すると、農地利用が約70万ha減少するおそれがあります。
農業者の減少や高齢化が見込まれる中、食料自給力を確保するためには、地域計画に基づく担い手への農地の集積・集約化を通じ、農地の適正利用を推進していくことが不可欠です。
それには、離農農地を引き受ける担い手を始め、様々な関係者が将来に向けて一定の見通しを持って農地の集積・集約化に取り組めるように、主な耕種農業について2020年の実績値と比較する形で、2030年における経営形態別経営体数や平均経営規模の見通しが次のように示されています。
経営体数

平均経営規模(1経営体当たりの経営耕地面積)

当該コンテンツは、「一般社団法人 全国農業会議所」の分析に基づき作成されています。
