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1.加工の重要性
上表は、流通経済研究所による2010年を100とした場合の2025年の品目別の日本国内の消費金額(推定値)です。
食品全体では5.3%減少する見込みとなり、そのうち米は約15%減少、果物は約30%減少となっています。
一方で、お惣菜や中食、レトルト等を含む調理済み食品は1.4%伸長するという分析結果となりました。つまり、この将来の消費予測からも食卓の変化として「加工されたもの」へのニーズが読み取れます。
2.農産加工品の売れ筋について
加工品のニーズが高まっている要因として、高齢化と世帯人数減少が挙げられます。
高齢者の一人暮らしだと、果物や野菜の1個が食べきれず、余らせてしまうことがあります。また、カレーなど料理をしても食べきれずに残ってしまうことも少なくないでしょう。こうした高齢者は、中食などの調理済み食品を購入するだけではなく、野菜なども少量にカット加工されたものを好む傾向にあります。
加工品のニーズが高まっているもう一つの要因は、共働き世帯の増加です。
家庭内で調理を担当することが多い女性も就労しているため、ゆっくりと料理をしている時間が無いのです。ただし、そういった共働き世帯の多くは家計費の節約のため、「料理はしたい」と思っています。
実際に、ゆっくり料理をする時間はないが、自炊はしたいというニーズに合わせた加工品である「カット野菜」、「鍋野菜セット」、「下ごしらえ済みの農産品(水煮等)」などは都市部のスーパーなどでは伸びています。
下表は、2015年に流通経済研究所で実施した青果部門の生鮮バイヤーへのアンケート結果です。これからの売場や店舗に必要なものについて、大いに必要(5点)から、必要ではない(1点)までの間でバイヤーに選択してもらいました。
多くの生鮮バイヤーは安全・安心の担保、鮮度と品質の確保と維持、安定供給を重視ポイントにあげています(取引のための前提条件)。さらに、加工度を高めた商品の展開も重視していることが分かります。
3.実需者のニーズ
現在の小売業、レストラン等に共通する課題は、労働力不足です。小売のバックヤード、レストランの厨房に人が足りないため、店内での加工工程を極力少なくし、少人数で店舗運営を回せる体制づくりを進めています。
そのため、1次加工やパッキングがされた状態での納品を求める傾向が強くなりつつあります。特に、青果部門では、アウトパックを求めるバイヤーが多くなっています。
実需者のニーズを考える場合、重要なポイントはその理由、背景の理解です。例えば、「ドライフルーツが欲しい」というバイヤーが居た場合、それが土産物店なのか、バーなのか、地元のスーパーなのかによって、使われる用途や探している理由は異なるはずです。
こうしたバイヤーのニーズ(解決すべき問題)を正しく把握することが非常に重要であり、そのうえで、それぞれのバイヤーの異なるニーズにどう向き合っていくかを考えなければなりません。
加工においては、バイヤーの異なるニーズに合わせた加工方法の選定や加工レベルを検討することが重要です。
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。