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1.海外マーケットに目を向けよう
少子高齢化によって日本の国内マーケットは縮小が見込まれています。高齢化によって1人あたりの食べる量が減少することは当然ながら、少子化によって食べる人口の減少も見込まれるためです。
一方で、世界に目を向ければ全世界の人口総数は増加しており、将来の食糧難が危惧されるほどです。経済的に大きく成長を続けている国も多く、今後も持続的に成長が見込めるマーケットとして、日本国外の情勢をとらえておくことは非常に重要です。
2.輸出を実現するために
輸出を実現するために、最も重要なポイントは「なぜ輸出を行うのか?」という輸出の目的を明確化することです。
その際には、経営戦略の中でしっかりと輸出事業を位置づけておく必要があります。経営戦略上、輸出事業をどのように位置づけるか、明確化することによって、具体的な目標を設定することができるのです。
例えば、売上4億円の企業が、国内が飽和状態であるため、会社の売上を伸ばす領域として輸出を位置づけ、5年後に全体売上の20%、1億円の売上を稼ごうと目標を立てたとします。
そうすることで、5年後の1億円という目標から逆算して、「5年後に1億円売るためには、4年後に5千万円売り、3年後に現地販売開始、2年後には展示会出展...」といったように、より具体的な目標を立てることが可能となるのです(下図)。
3.なぜ輸出が難しいのか
輸出が国内で販売するよりも難しいとされる理由はいくつかありますが、その中でも最も大きな理由のひとつは、顧客のニーズの把握が国内ほど容易にできないことです。
今は「良いモノ」を作れば、売れるという時代ではなくなりました。売れるモノと、良いモノは、別なのです。売れるためには良いモノでないといけないが、良いモノだからと言って売れるわけではないのです。
そもそも、日本の「良いモノ」だからといって、海外でも「良いモノ」と評価されるとは限りません。また、同じモノであっても、食べ方や調理方法などによって、求められる食味や食感が異なってきます。
顧客のニーズを知らなければ、ニーズに合った展開はできません。輸出を成功させるためには、その国の市場(マーケット)と顧客、そのニーズを知り、対応していく必要があります。
顧客のニーズに合わせた生産を行い、販売する方式を「マーケット・イン」と呼び、生産者起点で生産したものを販売する方式を「プロダクト・アウト」と呼びます。
これからの農業経営に求められるのは、この顧客起点の「マーケット・イン」の発想です。とくに輸出においては、自分の肌感覚で顧客のニーズを把握することが困難であるため、より「マーケット・イン」の考え方が重要となります(下図)。
4.中長期的な視点を持つ
どのような輸出戦略・輸出マーケティング戦略を立てようとも、一朝一夕に輸出で成功できるわけではありません。
輸出事業は、自社の商品や地域のブランド育成を意識しながら、中長期的な戦略を持って地道に腰を据えて進めなければなりません。
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。