更新日
1.情報収集の必要性
輸出において、マーケット・インを実現するためには、「市場」、「顧客」と「顧客のニーズ」を知る必要があります。輸出先のマーケットがどうなっているか、お客さんはどのような生活を送っていて、どんなニーズを持っているかを把握しなければ、良いマーケティングはできません。
一般的に、マーケティングのプロセスは、「環境分析と市場機会の発見」→「戦略的マーケティング」→「戦術的マーケティング」→「マーケティングの実行と評価」の順に実施するものとされています(下図)。
つまり、マーケティングの戦略を立てる前に、市場環境分析を行い、マーケットの中での機会を見つけることが重要なのです。
これが同じ国の顧客をターゲットにしている場合は、食文化や食味の好み、生活習慣等を良く理解できるため、比較的把握しやすいですが、輸出の場合は自身と全く違う価値観の生活者を想像しないといけないため、難易度が上がります。
もしも、輸出先の顧客の生活や食文化について日本と同じように理解できたとしたら、マーケティングや販売はそれほど難しくはないでしょう。現地の生活者の情報、マーケットの情報をどれだけ収集し、分析し、アクションに繋げるかが重要なのです。
2.把握するべき情報
では、輸出先の環境を分析し、市場機会を見つけ出すために把握するべき情報にはどのようなものがあるでしょうか。基本的には、国内と異なる「顧客」、「競合」、「環境」を知ることが重要です。以下に把握するべき情報について、重要なものをあげます。
【現地の環境】
日本と比べて...基本的にマーケットが異なることを理解する。
□ 法規制の違い
□ 商慣習の違い
□ 文化・宗教の違い
【現地の競合】
日本と比べて...日本と競合する企業が異なることを理解する。
□ 独自の商品、メーカーが存在する
□ 営業手法が違う
□ 既存ブランドの強さが違う
□ PB(プライベート・ブランド)の割合が大きい
※プライベート・ブランドは小売業が独自に自社店舗のみで販売する商品として展開するブランドである(セブンプレミアムやトップバリュなど)
【現地小売業】
日本と比べて...売場から、店舗オペレーション、取引形態(商流・物流)まで多くが異なる。
□ 店舗のつくりが違う
□ 各種規制が違う
□ 商品構成が違う
□ オペレーションが違う
□ 取引条件が違う
【現地生活者】
日本と比べて...基本的な生活習慣が違う。文化や習慣の理解、言語に注意が必要となる。
□ 購買行動が違う
□ 食生活が違う
□ 金銭感覚が違う
□ 家族構成が違う
3.情報収集・市場調査手法
では、どのように輸出先の情報を収集すればよいでしょうか。情報は受け身で待っていても集まるものではなく、積極的に取りに行くものです。ここでは、情報収集の手法、調査手法について説明します。
情報収集の目的は、進出したい国・地域のニーズを知ることであり、自社の商品が進出できるチャンスを探ることでもあります。そのため、情報収集においては、アクションにつながる情報を得ること、つまり「行動につながる情報」を重視して収集していくことが必要です。
最も注意が必要なのは漠然と情報を集めてしまうことです。海外の情報を調べだすとキリがないと感じることがありますが、それは調査する内容を絞り切れていないことが原因です。
できるだけ具体的な調査目標を立て、あらかじめ調査の目的を明確にすると効率的な情報収集が可能となります。
例えば、「●●国で求められる野菜は何か?」という目的で調査をしても、答えを見つけ出すことは非常に難しいでしょう。ただ、もっと具体的に「●●国で食べられているナスは、どのようなナスか?」という目的であれば、答えが出せるのです。
情報収集にあたっては、まず取得データの種類と、その特徴を把握することが必要です。
データには、自分が調査したデータである1次データと、他者が調査したデータである2次データが存在しますが、まずは誰かが調べて公開している2次データの収集に注力する方が効率的です。国内で取得できる2次データについて、以下に示します(下表)。
なお、基本的に食品輸出に関する情報を国内で最も持っているのはJETRO(日本貿易振興機構)です。そのため、まず情報収集においては、JETROホームページから検索を進めていくことが時間とコストの削減になります(http://www.jetro.go.jp/)。
また、JETRO以外の主要な政府統計や資料を以下に示します(下表)。
参考のため、ここで挙げた資料や統計等へのリンクを以下に記載します。
<政府機関等へのリンク>
経済産業省:http://www.meti.go.jp/
財務省貿易統計:http://www.customs.go.jp/toukei/
総務省統計局:http://www.stat.go.jp/
IDE-JETRO:http://www.ide.go.jp/
JTECS:http://www.jtecs.or.jp/
<海外統計機関へのリンク>
海外の公的統計に関しては、総務省統計局のリンク集を利用します。http://www.stat.go.jp/info/link/
<各国の市場情報>
海外・国内の調査機関で各国の市場情報を調査しており、データ提供は有料の場合が多いですが、無料で公開している資料もあるため、利用できるものは何でも利用します。多くの場合、海外では言語は英語または現地語です。
EUROMONITOR:http://www.euromonitor.com/
インテージ(タイ):http://www.intage-thailand.com/
4.調査データのとりまとめ方法
収集した情報やデータは、1次、2次問わず報告書にまとめて整理し、共有できるようにします。収集したデータや調査データをまとめる際には、以下の4点に注意しましょう。
①完全さ:相手を想定し、長すぎず・短すぎずまとめる
②正確さ:情報や論理づけに間違いがないか確認してまとめる
③明快さ:分かりやすくまとめる(読み手がすぐ理解できるか)
④簡潔さ:主題について書き、余計な議論はできるだけ省く
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。