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1.ブランドとは?
ブランド(Brand)の意味を辞書でしらべると、以下のような意味があるとされています。
① 商標(Trademark)、銘柄、ブランド
② 燃えさし、燃え木、焼きごて
③ 焼印、烙印 (Burnedが語源)
ブランドの語源は、Burned、つまり焼き印です。見た目で区別ができない商品に対し、製造した人の焼き印を入れたことが始まりとされています。この、「個別に認識してもらう」ことがブランドの目的であると言えます。
有名な事例では、P&Gの石鹸があります。従来の石鹸は棒状からの切り売り(石鹸棒)でした。ただ、この切り売り石鹸の場合、固有名詞、つまりは商品の名前がありませんでした。人々は石鹸売りが来たら、容量だけを伝えて買っていたのです。
そして、1879年、P&G社創業者の息子であるHaley Procterは、従来の石鹸棒に代えて、石鹸を小型に成型したものに「IVORY」という商標を付けて販売しました。パッケージ化して、個別に名前を付けたことによって、初めて指名購買(IVIRYが欲しいという指名での購買)、反復購買(次もIVORYを使いたいというリピート購買)が可能になったのです。
つまり、ブランドは他の商品との差別化を目的とした「固有名詞」であり、オリジナリティを伝えるものであると言えます。
2.ブランドの基本機能
当然ながら、ブランドには識別手段(Identifier)としての機能があります。固有名詞として、他の商品と違う、ということを顧客に識別してもらう機能です。
例えば、同じ新潟のコシヒカリであっても自分の名前を付けて、「新潟の〇〇さんが作ったコシヒカリ」として販売すれば、別の商品として識別されることになります。
次に、出所表示、品質保証(Endorser)の機能があります。
例えば、「国産コシヒカリ」と「新潟の〇〇さんのコシヒカリ」があった場合、後者の方が美味しいイメージを持たれるでしょう。それは、コメ産地として有名な新潟というブランドが、出所として明示され、それによって品質が保証されるからです。
同様に、ブランドには意味とイメージの付与(Descripter、Driver)という機能もあります。
上記の例で言えば、「新潟」という地域名を自社のブランド名につけることによって、新潟という意味やイメージが商品に付与されます。
3.ブランド構築の目的
ブランド構築の目的は、消費者の意識の中に、まとまった意味領域を創造することです。この意味領域とは、ブランドに対する消費者のイメージや感情、愛着といったものです。
固有名詞としての名前を消費者が聞いたとき、それを良いイメージとして具体的に頭の中に思い浮かべてもらえることが理想なのです。
また、品質保証の機能を考えると、ブランド構築の目的の一つには、企業の長期的な意思(約束)を表明することがあげられます。
このブランド(商品名)は、こういう商品ですよ、と品質を保証するのであれば、その品質に対して消費者に約束をしなければなりません。この約束を破ってしまうと、信頼を失ってしまい、ブランド力は失墜します。
例えば、有機栽培でニンジンを作っている生産者が「オーガキャロット」という商品名で自社のニンジンジュースを売り出していた場合、「有機栽培である」、「こういう栽培をしている」といった約束が必要になるのです。約束をしなければ、ブランドを確立することは難しくなります。
そして、ブランド構築の最終的な目的は、消費者との間に長期的な関係性を構築することです。
マーケティングは「売る仕組み」を作ること、と言われますが、ブランドを作ること(ブランディング)は「売れ続ける仕組みをつくること」であると言われます。ブランド構築は究極の差別化であり、長期的な顧客との関係性構築に他なりません。
4.ブランドを作ってみよう
他の商品との差別化を行いながら、自分の名前(自分で作った名前)で商品を売りたいと思ったときが、ブランド構築のスタートのタイミングです。ブランド構築にあたっては、以下のステップで考えてみましょう。
ステップ1:ブランドのコンセプトを考える
ブランドとして、差別化のポイントがどこにあり、何を伝えていくべきなのか。ブランド自体の存在意義などを含めて、コンセプトを考えて文章にしてみましょう。ここで作成した文章などはネーミングを考える時にも活用できます。
ステップ2:ブランドのミッションを考える
次に、ブランドを作ることで目指すべき将来像を考えましょう。この将来像は、自分だけはなく、食べてくれる消費者や社会までを考え、関わる人々の幸せに対して作成するブランドがどのように貢献するのかといった視点で考えることが重要です。
ステップ3:ブランドの約束を考える
コンセプト、ミッションが決まったら、ブランドとして消費者に対してどのような約束をしていくのかを考えましょう。そして具体的に、消費者への約束を明示できるようにします。
ステップ4:ブランドのコミュニケーションを考える
そして、ブランドのコミュニケーションを考えます。ここで言うコミュニケーションとは、ブランドをそのブランドとして消費者に認識してもらうためのツールです。必ず必要なのはブランドの名前、ブランド・ネームです。そのほか、ロゴやキャラクター、スローガン、パッケージの形状などもブランドを伝えるための要素として検討できます。
ステップ5:ブランドの認知拡大方法を考える
ブランドのコンセプト、ミッション、約束、名前などが決まったら、それを消費者に伝えていくための方法について考えます。ブランド力はブランドの認知がどれだけされているかとブランドのイメージがどれだけ良いかによって決まると言われています。できるだけ多くの人に認知してもらえる策を考えましょう。
イベントなどの実施に加え、WEBや動画、SNSの活用なども含めて幅広く考えていくことが必要です。
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。