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家族経営は、家族の同意と協力があれば法人化できますので、法人化しやすい形態といえます。一般的には、株式会社形態を選択する場合が多いのですが、合同会社や農事組合法人を選択することもできます。
家族経営の法人化判断基準
家族経営で株式会社を選択する大きな理由は、事業内容に制限がないことや1人でも設立できるというメリットがあるからです。
一方、農事組合法人の場合には、出資者が3人以上必要となり、事業内容は農業及び農業関連事業に限られ、将来の事業発展には制約がでてきます。
農事組合法人は「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」が適用されなかったため選択することもありましたが、この制度は廃止となり、家族経営で農事組合法人を選択するメリットはほとんどなくなりました。
また、最近では、合同会社を選択するケースも増えてきました。合同会社は2006年の会社法改正により新しく設立できるようになった会社形態です。合同会社は、株式会社に比べてまだ認知度が低いですが、法人の設立時に登記費用が安いなどコスト面でメリットがあります。
●株式会社と合同会社との比較表
法人への資産の引き継ぎの税務上のポイント
土地建物などの不動産は、個人から法人へ貸し付ける場合が一般的です。農業用機械設備などの動産は、法人に譲渡するのが一般的です。棚卸資産は、そもそも貸し付けることができませんので、法人に譲渡することになります。法人化に伴い資産を譲渡する場合には、次の点に留意して下さい。
資産の譲渡価格には注意が必要
個人から法人に資産を移転するときは、税務上は時価で譲渡することが求められます。個人が法人に対して時価の2分の1未満の価額で資産を譲渡した時は、時価で譲渡したものとみなして個人の譲渡所得が課税されるので注意してください。無償で譲渡した場合も同様です。
一方、時価を下回る金額で資産を譲り受けた法人については、時価と譲渡価額との差額が受贈益として法人税課税されます。
消費税の免税事業者と課税事業者の選択
法人を設立した場合には、資本金等の額が1,000万円未満であることなど一定の要件を満たすことで、最大2年間消費税の免税事業者になります。令和元年10月以降の消費税の標準税率が10%ですので、免除される消費税額も多額になり有利になることが多いです。
しかし、畜産経営のように法人が多額の棚卸資産を譲り受ける場合や高額な農業設備を法人へ譲渡する場合には、消費税について検討が必要になります。これらの資産の移転は、消費税法上、法人の課税仕入れとなり、設立年は消費税の還付を受けることもできます。
そのため、例えば資本金の額を1,000万円以上としたり消費税課税事業者選択届出書を提出したりすることにより、あえて課税事業者になる方法もあります。事前に十分な計画が必要です。
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