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1.特例内容
(1) 特例措置発足の背景
農業ハウス等農業用施設用地の農地法上の取り扱いについては、これまで、農地を形質変更せず、棚の設置やシートの敷設などいつでも耕作可能な状態が保たれているものは、引き続き農地法上の農地に該当する一方、コンクリート等で地固めし、耕作できない状態になっているものは農地に該当せず、農地転用の許可が必要とされてきました。
一方、営農形態の多様化などの諸事情(下表参照)から、農地の底面を全面コンクリートで覆う事例が発生してきました。その場合、従来の農地法の取扱いでは、農地に対する当該行為には農地転用の許可が必要となり、また農地転用に伴い固定資産税が上昇することとなります。
こうした事態に伴い、農業ハウス等の従来の農地法の取扱いの見直しを求める主張が強まりました。
農業ハウス等の底面をコンクリート等で覆う現場ニーズ

(2) 農作物栽培高度化施設に関する農地法の特例
前述の事情を背景等に、2018年の農地法改正で、農業ハウス等に係る従来の農地法の取扱いに係る農地法の特例規定の整備が行われました。
その内容は、農業委員会への届出(第43条第1項)に係る「農作物栽培高度化施設」の用に供されるその農地(高度化施設用地)は、その農作物栽培高度化施設において行われる農作物の栽培を耕作に該当するものとみなして、「農地」と同様に取り扱われることとなりました(法第43条第1項)。
この結果、当該施設の設置に際し施設の底面を全面コンクリートで覆うとしても農地転用の許可が不要となりました。また、相続税・固定資産税等の税制上の措置も農地と同様の取扱いとなります。
これに関連し、留意を必要とするのは、当該施設用地が「農地」と同様に取り扱われることから、当該施設を設置後に高度化施設用地を売却するなどの権利の設定・移転をする場合には法第3条の許可が必要になります。
2.農作物栽培高度化施設
(1) 農作物栽培高度化施設とは
農業委員会への届出に係る農作物栽培高度化施設とは、専ら農作物の栽培の用に供する施設であって農作物の栽培の効率化又は高度化を図るためのもののうち周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないものとして農林水産省令で定める一定の基準を満たしたものと定義付けられています(法第43条第2項)。
(2) 高度化施設の主な基準
高度化施設の主な基準(農地法施行規則(以下「則」という。)第88条の3)は次のとおりです。
① 農作物の栽培の用に供する施設であること。
② 周辺農地の営農条件に支障を生ずるおそれがないものとして、当該施設が次の要件の全てに該当するものであること。
- 施設の棟高は8m以内、軒高は6m以内とし、平屋構造に限ること。(下図「高さ基準」参照)
- 施設のうち、屋根や壁面を透過性のないもので覆うものについては、春分の日及び秋分の日の午前8時から午後4時までの間において、「周辺農地におおむね2時間以上日影が生じない」こと(下図「日照基準」参照)。
- 施設からの排水について、放流先の管理者の同意を得ること。


③ 当該施設の設置に必要な行政庁の許認可等を受けていること又は受ける見込みがあること
④ 本制度の対象であることを示す標識を設置すること
⑤ 借地に施設を設置する場合には、土地所有者の同意を得ていること
⑥ 附帯設備の取扱い:事務所、駐車場等は、高度化施設用地における農作物の栽培に通常必要不可欠なものとは言えず、当該農地から独立して他用途への利用又は取引の対象となり得ると認められる場合には、高度化施設用地として取り扱うことはできないとされている。(農地法関係事務高度化に係る処理基準第14の2の(6))
⑦ 太陽光発電設備等を設置する場合の取扱い:①から⑥までのほか、設置場所に応じ、次によることとされている。(農地法関係事務に係る処理基準第14の2の(7))
- 高度化施設の屋根又は壁面に設置する場合
次のいずれかに該当するときは、高度化施設に該当する。
〔売電しない場合〕
発電した電力を高度化施設に設置されている設備に直接供給するものであり、発電能力が当該高度化施設の瞬間的な最大消費電力を超えないこと
〔売電する場合〕
認定農業者又は認定就農者が、認定に係る農業経営改善計画又は青年等就農計画に位置付けられた高度化施設に設置すること
- 高度化施設に附帯して農地に設置する場合
⑥に相当する場合には、高度化施設用地として取り扱うことはできない。
3.農業委員会への届出
農業委員会への届出(則第88条の2)
(1) 手続について
① 高度化施設届出書を農業委員会へ提出して行います。届出書には、届出者の氏名、住所、該当地の所在、地番、地目、面積、所有者等、施設の面積、高さ、軒の高さ及び構造、施設の設置時期を記載します。
② 届出書には、次の書類を添付します。
- 申請者が法人である場合には、法人の登記事項証明書及び定款又は寄附行為の写し
- 該当地の土地の登記事項証明書
- 施設の位置、配置状況及び標識の位置を示す図面
- 日照に影響を及ぼすおそれがないものとして、施設の高さ基準に適合することを明らかにする図面
- 営農に関する計画書
- 次に掲げる要件の全てを満たすことを証する同意書等
・農作物の栽培が適正に行われていないと認められる場合における適切な是正措置を講ずることについての同意書
・施設設置後、周辺農地に係る営農条件に支障が生じたと認められる場合における適切な是正措置を講ずることについての同意書
- 施設からの排水の放流先の河川管理者等又は借地に施設を設置する場合における土地所有者の同意書
- 施設の設置に必要な行政庁の許認可等を受けていること又は受ける見込みがあることを証する書面
- 当該施設が周辺の農地に係る営農条件に著しい支障を及ぼすおそれがある場合において当該支障を生じないことを証する書面
(2) 農業委員会の処理
① 農業委員会は、届出書の提出があったときは、以下の点を確認の上、その受理又は不受理を決定します。
- 当該施設が2(2)の基準を満たしているか
- 届出書の記載事項が記載されているか
- 添付書類が具備されているか
- 施設設置のために農地に係る権利を取得する場合における法第3条第1項の許可申請がなされているか
② 農業委員会への届出は、受理されるまでは届出の効力が生じません。
③ 農業委員会が届出を受理するときは、遅滞なく受理通知書を届出者に交付します。受理通知書の交付があるまでは、届出者が高度化施設の設置に係る行為に着手しないよう農業委員会は指導することとされています。
4.栽培状況の確認と違反転用 (高度化施設に係る留意事項)
① 栽培状況の確認
農業委員会は毎年、利用状況調査(農地パトロール)を実施します。この利用状況調査等の結果、営農を行うべき時期に適切な栽培が行われていないことが確認された場合には、農業委員会は施設所有者に対し、利用意向調査や相当の期限(6月以内)を定めて農作物の栽培を行うべき旨の勧告を行います。
② 違反転用
次のような場合、農作物栽培高度化施設用地が転用に該当し、違反転用になる場合があります。その場合、農地転用許可権者(都道府県知事等)から原状回復命令がなされ、農地への復元義務を負うこととなります。
- 農業以外の用に供する場合
・農作物高度化施設を撤去し、住宅や工場などの施設を設置する場合
・農作物高度化施設の内部を直売所として利用する場合
- 農作物栽培の用に供されないことが確実となった場合として次に該当する場合
・①の勧告が定める相当の期限経過後もなお当該施設において農作物の栽培が行われない場合
・農作物の栽培を行わない意思表示を示した場合等
5.既存の農作物栽培施設の取扱
(1) 既存の農作物栽培施設の届出措置
改正農地法の施行日(2018年11月16日)以前に設置された既存の農作物栽培施設のうち一定の基準を満たす施設については、農業委員会へ届出を行うことで農作物栽培高度化施設として取り扱われることとなっています。(「農地法第43条及び第44条の運用について」の改正通知(2020年7月28日)。農地法関係事務に係る処理基準第14の5の(1))
届出の対象となる既存施設の基準について
- 届出時点において、農用地区域内にある土地に設置されていること
- 農地転用の許可等を関係書類で確認できること
- 農業経営改善計画又は青年等就農計画において、当該施設で農作物の栽培を行わなくなった場合に施設を撤去し、農地の状態に回復する意向がある旨の記載があること
- 農作物栽培高度化施設の基準を満たしていること
必要書類
- 農作物栽培高度化施設に係る書類一式
- 農地転用の許可等を示す書類
(2) 届出に係る既存の農作物栽培施設の取扱い等
① 農業委員会は、法第43条第1項による届出があった場合には、前述3に準じて取り扱う。
② 農業委員会は、届出者から提出があった農地転用の許可等を示す書類等により、必要に応じ転用担当部局に対して関係書類の提供を受けること等により、農地転用の許可の有無を確認する。
③ 農業委員会は、届出に係る受理通知書を交付する場合は、届出に係る土地の登記簿上の地目を高度化施設用地としての地目(田又は畑)に変更することが望ましい旨を併せて周知する。
④ 高度化施設用地の登記手続きを適切に行う観点から、農業委員会は届出に係る受理通知書を交付した場合には、速やかに、その旨を農林水産省経営局経由で法務省民事局に連絡する。
当該コンテンツは、「一般社団法人 全国農業会議所」の分析に基づき作成されています。
