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インターンシップとは
インターンシップは、法律上の定義はありませんが、文部科学省では『学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した「就業体験」を行うこと』と定義しています。
近年は、企業の規模や業種に関係なく、学生にインターンシップの機会を提供する企業は珍しくありません。
学生の間でも、インターンシップは就活の重要なプロセスとして定着してきており、農業でも地元の大学等と連携してインターンシップを受け入れている法人があります。
インターンシップを実施することの企業側のメリットとしては、次の点が挙げられます。
・参加した学生の能力を把握することにより、優秀な学生を選定して採用することができる
・インターンシップを経た学生を採用することで、就職後のミスマッチによる早期離職を防止することができる
インターンシップ研修生が労働者とみなされる要素
インターンシップは、あくまで就労を「体験」する機会を提供するものであり、一般的に賃金も支払われないことが多く、労働基準法上の労働者ではありません。
しかし、実際の作業現場における実習など、従業員と変わらない内容の就労を行う場合には、インターンシップ生についても法律上の「労働者」として、法律による保護が求められる場合があります。
行政通達では、インターンシップ研修生の労働者性として、「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は個々の実態に即して行う必要がある。」としています(平成9年9月18日基発636号)。
また、別の行政通達では、インターンシップの実習生が労働者でない場合の例として、①教育課程の一環として行われている、②実習生が直接生産活動に従事することはない、③事業場が自らのための勤怠管理・制裁を行ってはいない、④事業場から一定額の手当や交通費が支給されているが、実費補助ないし恩恵的給付と判断される、などに着目し、これらの要素が認められる場合には、労働者ではないものとして取り扱うとしています(昭和57年2月19日基発121号)。
これらから、インターンシップ研修生の労働者性の判断基準は、次のようになります。
・学生が直接生産活動に従事しているか
・学生の作業による利益・効果が企業に帰属するか
・学生が会社の指揮監督を受けているか
・会社が学生の勤怠管理を行っているか
インターンシップ研修生が労働者に該当する場合
インターンシップ研修生が労働基準法上の労働者に該当する場合には、会社はインターンシップ生の提供した「労働」に対する対価として、賃金の支給が義務づけられます。
また、その賃金の金額は、最低賃金法の適用を受けることとなります。
さらに、インターンシップによる実習中に研修生がけがをした場合、企業は労働基準法上の災害補償義務を負うことになり、具体的には、労災保険の適用を受けることになります。
研修生に労働者性が認められ場合に、万一、研修生が研修中にけがを負う等のリスクを考えると、研修生を初めから「労働者」として扱うべきでしょう。
具体的には、研修生と最低賃金額以上の賃金を支給する旨の雇用契約書を締結するということです。
インターンシップ研修生を労働者として扱わない場合
企業が研修生を教育の一環として農作業に従事させることはあっても、研修生を「労働者」ではなくあくまでも「研修生」として扱う場合は、トラブルを未然に防止する観点からも研修生に「危険な作業等はさせない」配慮が必要になります。
また、万一事故等があっても研修生本人の自己責任のもと、事前に本人が加入している民間の傷害保険等で自ら対応し、受入れ農家側に損害賠償の請求等は行わない旨の「研修覚書」を結んでおくことが重要です。
ボランティアとは
雇用は、被用者が使用者に対して労働に従事することを約し、被用者は使用者の指揮命令下で労働し、使用者がその労働に対して被用者に報酬を与えることを内容とする契約と解され、一方、ボランティアは、他人からの指揮命令を受けてする活動ではなく、自主的な無償の奉仕活動と解されます。無償であるか有償であるかが大きな違いです。
有償ボランティアとは
ボランティアは、一般的には無償の奉仕活動を指しますが、報酬を伴うボランティアも存在し、有償ボランティアなどと呼ばれています。
農業でも、ボラバイトと呼ばれる、ボランティアとバイトをかけ合わせたような仕事が存在します。
本来、労働者として雇用されるべきところを「有償ボランティア」という名で安価な条件で労働させることは、万一の事故の際に労災保険がきかない、また、ボランティアではないのでボランティア保険もきかない全く補償ない状態で仕事をしてもらうという、受入れる側にとっても非常にリスクの高い活動形態であることは十分承知しておく必要があります
ボランティアを活用するうえでの留意点
ボランティアは、労働者ではありません。
労働者であれば、万一の事故の際に労災保険で補償されますが、全く補償のない状態で仕事をしてもらうことになります。
本来、ボランティアは自主的かつ無償の奉仕活動ですから、ボランティア活動中のケガは自己責任が原則と考えるべきでしょう。
したがって、万一の際のトラブルを避けたいのであれば、作業中のケガなどは、作業者の自己責任であることを承諾した旨を記載した覚書などを事前に受け取っておくべきでしょう。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。