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労務管理とは、従業員の能率を長期間にわたって高く維持し、上昇させるための一連の施策をいいます。具体的には、従業員の募集・採用から始まり、賃金や労働時間の管理、人事考課、教育・研修、昇格・昇進、異動・配置、昇給・賞与、退職・再雇用に至るまで、従業員に関する全ての施策となります。
経営者は経営理念の実現化のために、従業員を雇い入れ、彼らを動かし、組織を運営します。その際、経営者は、どのように従業員を管理すれば、彼らが自分の理想とする働きをするかについて考え、諸々の施策を実行します。これが労務管理の本質です。
つまり、労務管理とは、経営理念の実現という目的のため、従業員にやる気を起こさせ、気持ちよく働かせるための、すべての要素に関する管理です。具体的に労務管理をするにあたっては、基本的なルールの理解が必要になります。
法令遵守
使用者(経営者)と従業員がともにルールを守ることが「良い会社」の絶対的条件です。会社が労務管理を行う上で、最も重要なルールは労働基準法です。
この法律は、「労働条件の最低基準」を定めたものです。最低条件ですから、従業員にとっては、労働基準法で定める基準を上回っているほうが望ましいはずですが、現実は、多くの会社でいろいろな面で労働基準法が守られていません。
労働基準法が守られていない理由としては、労働基準法そのものを使用者が知らないということも主な原因のひとつです。もちろん法律を知っていながら守っていないという会社もないわけではありませんが、このような会社は人を雇う資格のない会社であり、永続的な発展など望むべくもありません。
一方、従業員が守らなくてならないルールは就業規則です。労働基準法では、「常時10人以上の労働者を使用する」場合に就業規則を作成しなければならないと定めています。
これを受けて社員が10人に満たない会社では、就業規則をあえて作成しない傾向にありますが、使用者にはたとえ従業員が1人でも労働基準法を守る義務があるのですから、従業員の方にだって、たとえ1人でも守るべき就業規則があってしかるべきです。
農業労働の特殊性と労務管理の重要性
農業では労働基準法でいくつかの適用除外事項がありますが、これは、農業が他産業にない特殊性をもっているからであり、農業の労務管理はこの特殊性を抜きに考えることはできません。農業のもつ特殊性はその作目の違いなどで異なりますが、一般的に次のものを挙げることができます。
労働に季節性がある
農業では作物によって農繁期と農閑期があり、この結果、労働分配に不均衡が生じます。これを農業労働の季節性といいます。
異なる労働過程が多い
農業では作物の成長過程に応じて作業が異なり、この異なる作業は時間的経過の中で行わなくてならないため、その一つひとつの作業を分業化して同時並行的に進めることができません。
作業に適期がある
作物にはその栽培に適した時期があり、時期に応じた作業を一定の順序で行わなければなりません。
移動労働が多い
作物栽培などは、一般的に広い耕作地で行われるため、移動労働が多くなります。
屋外労働が多い
農業は、一般的に屋外労働が多いため、天候などの自然条件の影響を受けざるを得ないという特徴があります。
労務管理の重要性
農業の労務管理はこれらの特殊性を踏まえた上で取り組むことになります。少子高齢化が進む中にあって、これからの日本は産業全体としてみると人材不足になることが予想されます。
農業においては労働基準法で適用除外にされているからといって、労働時間や休日などで他産業に劣る労働条件のままでは若く新しい労働力の確保はますます難しくなると思われます。
これからの農業経営には、農業労働をより魅力あるものにすべく労働条件の改善や快適化を図ることがより重要になるでしょう。また、高齢者やパートタイマーなどの労働力を有効に利用する必要性がより増すことも考えられます。
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