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労働安全衛生法とは
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律です。労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、
イ 労働災害の防止のための危害防止基準の確立
ロ 企業内または企業間における労働災害防止についての責任体制の明確化
ハ 企業における自主的活動の促進
など、働く人々の安全と健康を守るとともに、さらに進んで快適な職場環境をつくることを目的とし様々な安全管理・衛生管理を事業主に義務づけています。
また、労働安全衛生法は、労働災害により労働者が死亡、負傷または疾病により休業した場合に労働基準監督署への報告を義務づけています。労働災害によって労働者が死亡した場合は、「業務上過失致死罪」に問われることがあります。
安全衛生管理体制
従業員が一定以上の人数に達すると、労働安全衛生法では、労働者の安全衛生が確保されるよう、管理体制を整備するよう義務づけています。以下のイは「10人以上50未満」で、ロ〜ニは「50人以上」で整備が義務となります。
イ 衛生推進者(安全衛生法12条の2)
労働安全衛生法では、労働者数10人以上50人未満の事業場に、労働衛生の技術的事項を管理する者として、衛生推進者の選任を義務づけています。衛生推進者は、次の資格を有する者から選任します。
①大学又は高等専門学校を卒業した者で衛生の実務経験1年以上、②高等学校又は中等教育学校を卒業した者で実務経験3年以上、③5年以上の実務経験者、④厚生労働省労働基準局長の定める講習を修了した者、⑤労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等。衛生推進者の職務は、ロ)衛生管理者の職務と同じです。
ロ 衛生管理者の選任(安全衛生法12条)と選任報告の届出(安全衛生法第100条)
労働安全衛生法では、労働者数50人以上の事業場に、労働衛生の技術的事項を管理する者として、衛生管理者の選任を義務づけています。
衛生管理者は、①医師、②歯科医師、③労働衛生コンサルタント、④衛生工学衛生管理者免許保持者、⑤第一種衛生管理者免許保持者、⑥第二種衛生管理者免許保持者、の資格を有する者から選任します。
衛生管理者の職務は、①健康に異常のある者の発見・処置、②作業環境の衛生上の調査、③作業条件、施設などの衛生上の改善、④衛生用保護具、救急用具などの点検・整備、⑤衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項、⑥労働者の負傷・疾病、それによる死亡、欠勤・移動に関する統計の作成などです。
ハ 産業医の選任(安全衛生法13条)と選任報告の届出(安全衛生法第100条)
労働安全衛生法では、労働者数50人以上の事業場に、産業医を選任するよう義務づけています。
産業医の職務は、①健康診断の実施およびその結果にもとづく労働者の健康の保持、②作業環境の維持管理、③作業の管理、④健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進、⑤衛生教育、⑥労働者の健康障害の原因の調査および再発防止、⑦衛生管理者に対する指導助言、⑧事業者または総括安全衛生管理者に対する勧告、⑨衛生委員会の構成員としての活動、⑩毎月1回の作業場の巡視などです。
ニ 衛生委員会(安全衛生法18条)
労働安全衛生法で、労働者数50人以上の事業場に設置を義務づけていて、事業場における労働者の健康障害を防止し、健康の保持増進を図るための基本となる対策などに関し審議し、事業者に対し意見を述べ、労働者の意見を反映させるために置かれる機関です。
衛生委員会での調査審議事項は、①労働者の健康障害防止および健康の保持増進をはかるための基本的対策、②労働災害の原因および再発防止対策、③その他、衛生に関する規定の作成、衛生教育の実施計画の作成、化学物質の有害性、作業環境測定、健康診断結果に対する対策の樹立などです。
選任・設置規模 | 業務 | 構成 | 行政への届出 | 資格 | |
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衛生推進者 | 常時10人以上50人未満 | 衛生に係る技術的事項 | 1人以上 | 労基署長への報告不要 | 学歴、実務 |
衛生管理者 | 常時50人以上 | 衛生に係る技術的事項 | 1人以上 | 選任後、労基署長へ遅滞なく報告 | 免許取得者 |
産業医 | 常時50人以上 | 医学の専門的知識 | 1人以上 | 選任後、労基署長へ遅滞なく報告 | 医師(厚生労働省で定める要件あり) |
衛生委員会 | 常時50人以上 | 健康保持増進、労災防止対策他 | 産業医、労働者代表の推薦が必要な委員あり | 労基署長への報告不要 |
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