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非正社員の法的な定義はありませんが、トラブルを防止するためにも自社内の雇用形態の区分として、その地位・定義・処遇等を明確化しておくことが重要です。
いわゆる正社員とは、「期間の定めのない労働契約を締結している労働者」をいい、一般的には長期雇用を前提に社員教育と人事異動を通してキャリアを形成させていく労働者です。
非正社員とその種類
反対に非正社員とは、「期間の定めのある労働契約を締結している労働者」をいい、次に挙げるように様々な雇用形態があります。
- パートタイム労働者
パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象となるパートタイム労働者の定義は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」です。雇用目的が雇用量の弾力調整の活用(いわゆる雇用の調整弁)にあり、家事・育児等の私生活と調和をとった簡易雇用であり、通常、家計補助的な立場を前提とした雇用期間を定めた短時間労働者をいいます。
農業の現場では、実態として「期間の定めのない労働契約を締結」しているパートタイム労働者も多く、これらのパートタイム労働者は、たとえば、子育てが一段落し、フルタイムで仕事ができるようになると社会保険に加入し、正社員(扱い)となる場合があります。正社員と非正社員の違いを社会保険の加入の有無(所定労働時間や労働日数)で区分しているのです。 - アルバイト
パートタイム労働者と比較して勤務が不規則または不定期で、繁忙期のみや所定時間外や深夜等、一般労働者の補てん等に雇用されることも多い、学生・フリーター等を中心とする期間雇用者です。 - 契約社員
契約社員は、有期雇用契約を結んだ労働者を指す言葉ですが、契約の何に重点をおくかについて次の2種類に分けることができます。
イ 雇用期間に重点がある場合
雇用期間内での勤務義務や一定期間内での成果達成を目的としています。
ロ 業務の遂行目的に重点がある場合
企画、設計、プロジェクト完成等、一般に、雇用期間を定めた比較的高度の専門職の場合をいいます。 - 嘱託社員
種々の雇用形態を含む幅広い概念で、多様な雇用形態がこの名称で呼ばれています。一般には、従事業務を特定し、正社員への転換や登用を予定しない有期雇用契約が通例となっています。また、定年退職後に再雇用された労働者を指すことも多く、個人請負、業務委託、コンサルタント等も含むこともあります。 - 派遣社員
労働者派遣法のもと派遣元事業主と雇用契約を結び、派遣先事業主に派遣される労働者をいいます。正社員やパートタイム労働者を「直接雇用」と呼ぶのに対し、派遣社員は「間接雇用」と呼び、派遣先事業主にとっては、必要な時に必要な人材を必要な期間だけ確保することができるメリットがあります。 - 研修生
一般的に研修生は労働者ではありませんが、その実態によっては労働者とみなされます。契約内容よりも事実が重要で、名称は研修生でも事業主との指揮命令関係があり、給与の支払等があれば労働基準法上の労働者となり最低賃金法等労働基準関係法令が適用されます。 - 外国人技能実習生
外国人技能実習生は、正確には労働者ではありませんが、取り扱う上では外国人労働者に含まれるとしているので、技能実習生には、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法等の労働者に係わる諸法令が適用されます。
労働基準法第3条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しているため、外国人であることを理由に日本人に劣る労働条件で雇用することは許されません。
面接
従業員の採用では、募集から決定の中でもっとも重要な行為は経営者が応募者と直接コミュニケーションがとれる面接と言えるでしょう。面接で重要なことは、いきあたりばったりで行うのでなく、きちんと「聞くべきこと」と「話さなければならないこと」などを事前に整理しておくことです。面接リストなどを準備しておくといいでしょう。
面接に際しては、次の2点が特に重要です。
- 応募者の態度・振る舞いを客観的に評価する
- 自社の現状と将来像を夢をもって相手に解りやすく伝える
<採用面接のときにしてはいけない質問事項>
採用面接のときにしてはいけない質問事項は、法律等で決められているわけではありませんが、本籍地や家族に関する質問など、タブーとされている事項はあります。
面接は、本人の人柄や仕事への意欲などを確認する上でなくてはならない大事なものですが、面接においては本人に対してどんなことを質問してもいいということはありません。本人の能力と無関係な事柄や、とくに後々大きな問題になりかねないセクハラまがいの質問などは、絶対にしてはいけません。
面接時にしてはいけないとされている質問事項は、次のとおりです。
①本人に責任のない事項 例えば・・
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、地位、収入、資産など)
②本来自由であるべき事項 例えば・・
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 労働組合・学生運動など社会運動に関すること
- 男女雇用機会均等法に抵触すること(交際している異性のこと、結婚の予定など)
雇用契約書の作成
労働者を雇用する場合、賃金や労働時間などに関する重要な労働条件は正社員であれ、パートタイム労働者であれ、必ず書面で明示しなければなりません(労働基準法15条)。
農業では、労働基準法で労働時間や休憩、休日などが適用除外とされていて、法律による規制はありませんが、書面で労働時間関係の労働条件を通知することは適用除外とはなっていません。
口頭のみでの雇用契約は労働基準法違反ですし、何より、後で「言った」「言わない」というトラブルの種を残すことになり、従業員に不信感を抱かれる原因となりかねません。雇用契約は、雇われる側からすると生活を左右する大切な契約で、それを口頭で済まされるとしたら不安は小さくありません。労使関係の始まりにあたって、雇用契約書の果たす役割は非常に大きく、その締結は必須といえます。
書面で明示する方法は、具体的には、雇用契約書を作成するか労働条件通知書を交付することになります。法的にはどちらでも構いませんが、より効果的なのは、雇用契約書の作成です。労使双方で記名捺印し1部ずつ所持するため、労働条件の透明性が高まり、誤解や不信感が生じにくくなります。
<雇用契約書に明示すべき労働条件>
労働者を雇用する際、明示しなければならない労働条件は下記のとおりです。
イ 必ず明示しなければならない事項(労働基準法第15条1項施行規則5条1項1号〜4号)
- 労働契約の期間(期間の定めがない場合は、「期間の定めなし」とする。)
- 就業の場所、及び従事すべき業務
- 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える勤務の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制における就業時転換
- 賃金に関する事項(決定、計算、支払方法、締切り、支払時期、昇給)
- 退職(解雇の事由を含む)
ロ 定めをする場合には、明示しなければならない事項(労働基準法施行規則5条1項4号の2〜11号)
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲など退職手当についての事項
- 臨時で支払われる賃金、賞与等、最低賃金額
- 労働者に負担させる食費、作業用品等
- 安全及び衛生
- 職業訓練
- 災害補償及び業務外の傷病扶助
- 表彰及び制裁
- 休職
上記イの必ず明示しなければならない事項(ⅰ〜ⅴ)のうち、ⅳ賃金に関する事項の「昇給」に関する事項は除き、書面による交付による明示が義務づけられています。
また、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法)により、労働基準法で労働条件の明示が文書の交付によって義務づけられているイ及びロの事項に加え、「昇給」、「退職手当」、「賞与の有無」「相談窓口」についても文書の交付等による明示が義務となっています。
労働契約の期間
労働契約は、契約の期間という観点から見てみると、期間の定めのない労働契約と期間の定めのある労働契約(以下有期労働契約といいます。)に分けられます。
正社員は、長期間にわたって働いてもらうための人材ですから、期間の定めのない労働契約、また、パートタイマーやアルバイト等は、繁忙期だけ欲しい人材であったりすることが多いので、有期労働契約とするというのが一般的でしょう。
有期労働契約を結ぶ場合、契約期間の上限は、原則として3年間です。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。