更新日
労働契約の終了
労働契約の終了には解雇と退職があります。「解雇」は、使用者からの労働契約の一方的な解除をいい、「退職」は、それ以外の労働契約の終了をいいます。
| 解雇に該当する労働契約の終了 | 退職に該当する労働契約の終了 |
|---|---|
|
|
解雇
労働契約法では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする(労働契約法16条)」としています。この規定を基本ルールとして、解雇をめぐるトラブルを防止・解決していくのが目的です。
また、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない(労働契約法17条)」としており、原則として契約期間の途中での解雇を禁止しています。
解雇の予告
労働基準法では、労働者に再就職のための時間的・経済的余裕を与えるため、使用者が解雇をする場合には、労働者に対して次のイまたはロを義務づけています。(労働基準法20条)
イ 少なくとも30日前に予告する
ロ 30日以上の平均賃金を支払わなければならない
解雇予告の適用除外
日雇等の解雇予告を必要としない者とその者に解雇予告が必要となる場合は次のとおりです。
| 解雇予告の適用除外者 | 解雇予告が必要になる場合 |
|---|---|
| 日々雇入れられる者 | 左の者が1か月を超えて引き続き使用されるに至った者 |
| 2か月以内の期間を定めて使用される者 | 左の者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合 |
| 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者 | |
| 試の使用期間中の者 | 左の者が14日を超えて使用されるに至った場合 |
解雇制限
労働者が解雇された後、再就職するのが困難な場合、たとえば出産などにより労働が困難な場合の解雇を制限することによって、労働者が安心して養生・休業することができるようにしたものです。解雇を制限される場合として、次の2つを定めています。
イ 業務災害による休業期間とその後の30日間
ロ 女性労働者が産前・産後の休暇を取得している期間とその後の30日間
(労働基準法19条)
解雇制限の例外
1 使用者が打切補償を支払った場合
労働基準法81条では、療養補償を受ける労働者が、療養の開始後3年を経過しても負傷・疾病が治らない場合に、使用者は、平均賃金の1,200日分の打切補償を支払えば、その後の補償義務を免れるとしています。この打切補償をしたときは、業務上の傷病の休業期間、その後の30日間であっても解雇できることになります。
2 天災その他やむをえない事由のために事業の継続が不可能となった場合
この場合は、所轄労働基準監督署長の認定を受けなければならない。
任意退職等
労働者が正社員等で使用者との間に期間の定めのない労働契約を締結している場合は、労働者からの意思表示による退職については、法的な規制はありません。
したがって、労働者はいつでも自由に退職できるということになります。民法627条では「雇用契約は解約の申し出があった後、2週間で雇用関係が終了する」と規定していますから、退職の申し出の翌日から数えて14日目に雇用関係は切れることになります。
ただし、労働者の突然の退職は、使用者側としては当然困ることになりますので、就業規則等で、たとえば「退職願は少なくとも1か月前に提出すること」と規定することは問題ありません。
期間の定めのある労働契約の場合
期間の定めのある労働契約では、原則として、やむを得ない事由があるときでなければ、契約期間中の退職は認められません。
ただし、1年を超える期間を定めた労働契約については、契約後1年を経過した日以後については、労働者は、使用者に申し出ることにより、いつでも退職できます。
この場合であっても使用者は、「解雇のルール」で見たように、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません(労働契約法17条)
定年制
定年制とは、労働者が一定の年齢(定年年齢)に達すると自動的に雇用関係が終了する制度をいいます。定年年齢は、高年齢者雇用安定法で「60歳を下回ってはならない」とされており(第8条)、男女で定年年齢に差を設けることも禁止されています。
また、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」により、原則として希望者全員の65歳までの雇用が義務付けられています。
退職時等の証明
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書の交付を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。なお、証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはなりません(労働基準法22条1項)。
また、解雇予告がされた日から退職の日までに、その解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なく証明書を交付しなければなりません(同条2項)。
金品の変換
労働者(死亡の場合は相続人)から請求があった場合、本人の権利に属する賃金その他の金品を7日以内に支払い、返還しなければなりません(労働基準法23条)。
ただし、これには退職金は除かれます。退職金については、通常の賃金とは異なり、あらかじめ就業規則等で定めた支払い時期に支払えば問題ありません。
内定の取り消し
内定の取り消しは、状況によっては、解雇に該当するので、下に挙げるような合理的と認められる正当な理由がないと無効となります。
イ 内定者が卒業できなかった場合
ロ 健康状態が悪化して就労に耐えられなくなった場合
ハ 破廉恥罪を犯す等の犯罪行為をした場合
ニ 会社側の事情としては、突然の経済事情の変化のため整理解雇をしなければならなくなった場合
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。
