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農業者年金とは
農業者年金は、農業に従事する方の公的年金です。農業者年金制度は、他の公的年金と同様の「老後生活の安定・福祉の向上」の目的とともに、年金事業を通じた農業政策上の目的を併せ持つ制度で、昭和46年1月に発足しましたが、平成13年に賦課方式から積立方式へと抜本的な改正が行われました。
新農業者年金制度は積立方式なので、納付された保険料は将来の自分のための年金給付の原資として積み立てられます。そして将来、納付した保険料総額とその運用益を基礎とした農業者老齢年金として受給することとなります。
積立方式の確定拠出年金
農業者年金は、将来受け取る年金額は、保険料と運用益で決まる「確定拠出型」の年金制度なので、加入者数や受給者数の動向等の影響に左右されにくい財政上非常に安定した制度です。
加入資格
- 年齢要件・・・・・・60歳未満
- 国民年金の要件・・・国民年金の第1号被保険者(ただし保険料納付免除者でないこと)
- 農業上の要件・・・・年間60日以上農業に従事する者
- 農業経営者だけでなく、配偶者、後継者などの家族従事者や自分名義の農地を持たない農業者も加入することができます。
加入と脱退
農業者年金制度は任意加入制度です。「将来、基礎年金だけでは不安だ」というような必要とされる農業者が任意に加入する制度で、脱退も自由です。
なお、脱退された場合は、それまでに加入者が払い込んだ保険料と運用益は、加入期間に係わらず、将来、年金として支給され、脱退一時金は支給されません。
保険料
保険料は、加入者自らが月額2万円から6万7千円までの間で、千円単位で自由に選択することができます。
保険料は、いつでも見直すことができ、生活のゆとりがないときは少ない保険料を選択し、ゆとりができたときは多い保険料に変更するというようにいつでも変更が可能です。
年金給付
- 農業者年金は、65歳から終身受け取ることができる終身年金です。
- 65歳に達したときから受給開始が原則ですが、60歳まで繰上げ受給を選択することもできます。
- 仮に80歳前に亡くなった場合は、死亡した翌月から80歳到達月までに受け取れるはずであった農業者老齢年金の現在価値に相当する額が、死亡一時金として遺族に支給されます。
農業者年金制度のメリット
農業者年金には、農業者にとって次のようなさまざまなメリットがあります。
政策年金である(国の助成がある)
農業者年金は、認定農業者や青色申告者等の担い手に対して、国から政策支援として保険料助成がある唯一の政策年金です。
具体的には、農業の担い手のうち、老齢時まで長期間農業に取り組み、安定した農業生産を行い、食料の安定供給に貢献することが期待される者の保険料の負担を軽減するため、支援(保険料の国庫補助)が行われています。政策支援を受けた者は、将来受給要件を満たしたときに、国庫補助額及びその運用収入を基礎とした特例付加年金を受給することができます。
補助対象者
次の「20年要件」、「所得要件」、「年齢要件」を満たし、かつ、次表(補助対象者区分と助成額)の区分1〜区分5のいずれかに該当する者です。同一経営内での夫婦や後継者など、複数でも対象となります。
- 【20年要件】
次の3つの期間を合算した期間が20年以上見込まれること
1. 政策支援の申し出をした日から60歳までの期間
2. 政策支援の申し出をした日以前における新制度保険料納付済期間
3. 新制度におけるカラ期間
なお、旧制度加入者(脱退一時金又は特例脱退一時金を受給した者は除く。)は旧制度の保険料納付済期間等も合算できます。
- 【所得要件】
必要経費等控除後の農業所得が900万円以下であること。配偶者、後継者の場合は支払いを受けた給料等が900万円以下であること。
- 【年齢要件】
旧制度の保険料納付済期間等を合算して20年要件を満たす旧制度加入者の場合は、昭和22年1月2日以降生まれであること
補助期間
政策支援を受けられる期間は、次のようになります。
- 35歳未満は、要件を満たしている全ての期間
- 35歳以上は、10年間を限度
- ①と②を合計して最大20年間
特例保険料
特例保険料は、政策支援加入者が納付する保険料をいいます。保険料額は、基本保険料2万円から政策支援加入区分ごとに政令で定められている国庫補助額(4,000円〜10,000円)を差し引いた額です。
補助対象者区分と助成額
政策支援区分 | 保険料助成を受けられる者 | 助成額(特例保険料額) | |
---|---|---|---|
35歳未満 | 35歳以上 | ||
1 | 認定農業者(※1)で青色申告者 | 10,000円(10,000円) | 6,000円(14,000円) |
2 | 認定就農者(※2)で青色申告者 | ||
3 | 区分1又は区分2の要件を具備している経営者と家族経営協定を締結し、経営に参画しているその配偶者又は直系卑属 | ||
4 | 認定農業者又は青色申告者のいずれか一方を満たす者で、3年以内に両方を満たすことを約束した者 | 6,000円(14,000円) | 4,000円(16,000円) |
5 | 35歳未満の直系卑属の農業後継者で35歳まで(25歳未満の者は10年以内)に区分1となることを約束した者 | ― |
※1認定農業者:農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)第12条の2第1項に規程する認定農業者。具体的には、他産業並の労働時間で他産業と遜色のない生涯所得をあげるよう、自ら農業経営を改善する計画を作成し、その計画に従って5年を目処に目標の達成に努力する者をいいます。
※2認定就農者:青年等の就農促進のための資金の貸付等に関する特別措置法(平成7年法律第2号)第4条第4項に規程する認定就農者。具体的には、将来において他産業並の労働時間と生涯所得を実現できる担い手に成長するよう、自ら農業に定着するための就農計画を作成し、その計画に従って農業で生活できるよう努力する者をいいます。
保険料は全額社会保険料控除対象である
農業者年金は、納めた保険料は、全額その年の社会保険料控除の対象となる所得税法上の所得控除を受けることができます。(804,000円が限度)
付加年金が支給される
国民年金の付加年金は、第1号被保険者だけに支給される老齢基礎年金の上乗せ年金です。農業者年金加入者は毎月付加保険料(毎月400円)を納付するので65歳から老齢基礎年金と一緒に付加年金が支給されます。
付加年金は、月々400円の付加保険料に対し、年額「200円×保険料納付済期間の月数」分が支給される、非常に有利な年金です。
取扱窓口
JAが取扱窓口となっています。加入の手続は最寄のJA窓口にて行ってください。
なお、制度の内容は、市町村農業委員会で指導・助言を行っています。また、各県の農業会議にも農業者年金の専門家(農業者年金相談員)が常駐していますので、詳しくは、最寄りの農業委員会又は農業会議でご確認ください。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。