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技能実習生の労務管理上の留意点
日本人と同等以上の賃金を
労働基準法は、賃金、労働時間その他の労働条件について国籍等による差別的取扱いを禁じています。したがって、受け入れ農業法人等に日本人の従業員がいる場合は、技能実習生に対して、日本人と同等以上の賃金を支給しなければなりません。
法定労働時間、休憩、休日等の適用除外事項の準拠
農業労働の特殊性から、労働基準法の労働時間・休憩・休日等の規定は適用除外されていますが、外国人技能実習生の労働時間等を決める場合は、基本的に労働基準法の規定に準拠し、労働契約、就業規則に於いて、具体的に定めるよう指導されています。
労働(技術実習)時間
ⅰ)1日及び1週間の労働時間の原則 【基準法 第32条】
1日の労働時間は8時間を、又1週間の労働時間は40時間を超えないこと。
ⅱ)変形労働時間
変形労働時間制を採用する場合は、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものによる定めをする。
(ア)1か月単位の変形労働時間制 【基準法 第32条の2】
(イ)1年単位の変形労働時間制 【基準法 第32条の4】
時間外労働の限度の基準 【基準法 第36条】
ⅰ)1日及び1週間の労働時間の原則を越えて時間外労働をさせる場合は、次の時間数を限度とする。
期間 | 一般 | 1年単位の変形 |
---|---|---|
1か月 | 45時間 | 42時間 |
1年間 | 360時間 | 320時間 |
なお、ⅰ)1日及び1週間の労働時間の原則を超えて労働させることが必要となる場合には、時間外労働をさせる事由、1日及び1日を越える一定の期間についての限度時間を労使協定において定める。
休憩 【基準法 第34条】
原則として、次のとおり一斉に付与する必要があるが、書面による労使協定が締結されている場合は、一斉に付与する必要はない。この場合には、休憩の与え方等を定めた労使協定を締結する。
(ア)労働時間が6時間を越える場合は、少なくとも45分
(イ)労働時間が8時間を越える場合は、少なくとも1時間
休日 【基準法 第35条】
原則として、毎週少なくとも1回の休日を付与することとするが、労働契約または就業規則その他これに準ずるものによる定めをした場合は、4週間を通じて4日以上の休日を付与する変形休日制を採用できる。
時間外、休日、深夜の場合の割増賃金 【基準法 第37条】
農業の技能実習生の場合においては、本条の最低の水準である次の割増賃金の支払いを指導すること。なお、農業の場合であっても、深夜業に関する割増賃金に関する規定は適用除外とならない。
- 時間外労働:通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上
- 休日労働 :通常の労働日の賃金の計算額の3割5分以上
- 深夜労働(午後10時〜午前5時):通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上
(時間外労働で、かつ深夜労働の場合は、5割以上(2割5分以上+2割5分以上)となる。)
「時間外労働・休日労働に関する協定」(三六協定)の作成
労働基準法は、1週40時間、1日8時間労働と1週間に最低1日の休日を原則としていますが、労働基準法第36条により時間外労働・休日労働に関する協定(以下「三六協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることを要件として、時間外労働として、1日または1週の法定労働時間を超えて労働させ、あるいは休日労働として1週1日または4週4日の法定休日に労働させることを認めています(労働基準法36条)。
農業では労働基準法の労働時間関係が適用除外ですが、技能実習生に対しては労働時間関係の労働条件について労働基準法を守ることが義務づけられています。したがって、技能実習生に時間外労働や休日労働をさせるには事前に「三六協定」の締結及び届出を済ますことが必要になります。
三六協定に記載する「延長することができる時間」は、技能実習生と結んだ雇用契約書の「所定時間外労働」欄に記載した時間の範囲内となり、「1日」と「1か月」及び「1年」で定めます。
労働基準監督署の調査で技能実習生の時間外労働が三六協定で定めた時間より多いと指摘されるケースがありますが、協定で定めた時間を超えて労働させることはできませんので注意してください。
「時間外労働・休日労働 に関する協定届」の記載例(網掛け部分が記載欄)
事業の種類 | 事業の名称 | 事業の所在地(電話番号) | |
養鶏 | (有)○○養鶏 | ○○市○○町○ー○○ |
時間外労働を させる必要のある具体的事由 |
業務の種類 | 労働者数 (満18歳以上の者) |
所定労働時間 | 延長することができる時間 | 期間 | |||
1日 | 1日を超える 一定期間(起算日) |
|||||||
1か月 (毎月1日) |
1年 (○月○日) |
|||||||
①下記②に 該当しない 労働者 |
鶏舎内洗浄消毒・ 清掃、機械調整 |
舎内清掃・洗浄消毒 | 8人 | 8時間 | 2時間 | 20時間 | 240時間 | ○年○月○日 〜○年○月○日 |
②1年単位の 変形労働時間制により 労働する労働者 |
休日労働をさせる必要のある具体的事由 | 業務の種類 | 労働者数(満18歳以上の者) | 所定休日 | 労働させることができる休日並びに始業及び終業の時刻 | 期 間 | |||
鶏舎内洗浄消毒・清掃、機械調整 | 舎内清掃・洗浄消毒 | 8人 | 個人毎に定める日 | 1か月のうち2日 8:00〜17:00 |
○年○月○日 〜○年○月○日 |
※満18歳未満の年少者については、三六協定によっても時間外労働・休日労働を行わせることはできません。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。