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挑戦者たちの奮闘記執筆者にAgriweB事務局がインタビューをしました。
新規就農に向けた経験談は広く世に出ていようかと思いますが、改めて就農・起業に際し、積み重ねてこられた一つ一つの行動についても伺うことができればと考え、今回、インタビューをお願いさせていただいたものです。
石川県『菜園生活 風来』の西田栄喜さんです。
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AgriweB
- 質問:農業を始めようとした時、”最初”に取られた行動はなんでしょうか?
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西田さん
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答:図書館と本屋に行きました
- ・インターネットも十分にない時代。まずは情報を集めに図書館と本屋に行きました。
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AgriweB
- 質問:行政や支援団体には行かれなかったのでしょうか?
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西田さん
- 答:その時は仕組がわかっていませんでした。インターネットとかもなかったので
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AgriweB
- 質問:今振り返ってみて、”ここに相談・連絡してよかった”と思った先はどこでしょうか?
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西田さん
- 答:研修先の農業法人です
- ・農業法人で学び、一番よかったのは取引先を知れたことです。そして、取引先というと販売先に着目しがちですが、資材仕入れ時の業者の方などを知れることが後々重要でした。
・どのような関係先から、どのような流れで、何を仕入れているのか、を学べたことが大きかったです。自身が就農するこの地域で、どのような方が何を対応してくださるのか、例えば苗屋さんや土のブレンドはどなたにお願いすればよいのか等を学びました。これはインターネットでは得られない情報であり、大変貴重です。
・自身が独立する際、信用のおける先がどなたであるか分かりますし、「自分の時もこれくらいの価格でお願いします」と会話しながら費用感を掴むこともできたのは大きかったです。
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AgriweB
- 質問:農業法人における研修生時代を経験を振り返り、後進の方にお伝えしたいことは?
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西田さん
- 答:少しの面積でも良いから、研修中は自分でも作物を育てることです
- ・農業というのは一年や二年の研修で言われたことをこなしても何かを得られるものではないと私は思っています。
・そういったなか、少しでも自分で育てることは「何を質問すればよいか」の気づきをもたらしてくれますし、例えば二年の研修であれば、自分が独立する時は実質就農三年目となりますので、これはとても大切なことです。
・どのような道具が必要で、どのような支柱を使用するのか、等を経験しておくことも重要です。
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西田さん
- 答:自分の目的に合う農業法人を選択することが重要です。”生産技術を学ぶ”に着目しすぎていないか振り返ることが重要です
- ・農業といっても千差万別です。私の場合は、『漬物という加工品を作り販売すること』が主目的でした。そして、”原材料を得るために農業が必要”だったのですね。
・国内の農業支援は作物を生産・販売することを支援する制度ですので、私の場合は主目的に当てはまらず、研修先を自分で探す必要がありました。
・そして、「加工品を扱っている」「直売を行っている」先を研修先として選択しました。仕入⇒生産⇒加工⇒販売を学ぶなか、生産技術以外にラッピングなども注視して学んでいました。
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AgriweB
- 質問:これだけは伝えたいということは?
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西田さん
- 答:コミュニティに入ることが大事です
- ・農業そして地域というと閉鎖的なイメージがあろうかと思います。ですが、コミュニティに入るのは重要なことだと考えます。
・農業は、農地と技術と資金、が最低限必要です。これらはネットワークを土台にして築いていくものとなるのです。
・例えば、認定農業者になるには「圃場面積が●●アール必要」等の条件があります。そして、認定農業者になれないと融資等も受けられない。本来、融資を受け、土地を取得してというが手順として正しい気がしますが、現状、まず認定農業者にならないと就農が難しいという現実があるのです。
・この際、コミュニティに相談をすると、課題を解決する糸口を誰かが示してくれますので、このコミュニティというのは就農において極めて重要なのです。全国にこのコミュニティがあり、私の研修生もその人に合ったコミュニティを紹介しています。技術も学べるし、土地を紹介してもらい、認定農業者に一歩ずつ近づけるのです。
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西田さん
- 答:なんでもよいので、SNS等で”自分の”情報を発信することです
- ・実感をしないと納得しづらいことかもしれませんが、まず自分から情報を発信しないと情報というのは集まってこないものなのです。
・「新規就農失敗日記」でも何でもよいので、発信してみることです。アーカイブの蓄積が、”この人はコツコツを今の農園を作り上げてきた人なのだ”という信用を築き上げますし、自分に関心を持ってくる方はどのような方であるのか、そこにはどのような方が集まってくるのか、発見があろうかと思います。
・また、得てして人に与えないと自分自身も得られるものが少ない、というのは何事にも通ずるのではないかと思います。
編集後記…最後に、西田さんは農家の中でご自身をジャンル分けすると?、という質問をさせていただきました。西田さんの回答は「家族経営規模の6次産業化かな」というものでした。
農業は、本来、より多くの面積でより多くの作物を生産する方が売上が上がりやすい事業です。そのようななか、西田さんは家族規模でも生活していけるだけの収入を得られる家族経営規模の6次化を実現されました。
マニュファクチュア化しなくとも、生きていくだけの収入を得ると共に、家族経営が故に職業を通じて得られる喜びや個人の幸せを追求することが出来ることが、長年農業を続けられている要因かもしれないとのことです。中山間地域の農業は飛地・棚段で規模拡大に向いていないとの声も聞こえる中、国内農業の主流ではないかもしれませんが、一つの日本の農業の形かもしれません。
西田さんはこうも話されました。「職業の選択の一つとして提示できることを目指している」「人を雇用する大型化だけが成功例ではないと考えており、それに拠らない幸せを目指している」「また、販売するのが野菜だけではない?次に農業に携わる層に知恵や経験を販売することも体現してみたい。体力が衰えた後も農業に携わりたいから」。
農業に携わる人々の価値観が多様化するなか、大型の事業には手が出せない、農地を自分で持っていない方に、西田さんの経営の在り方は一つのヒントとなるかもしれません。
当該コンテンツは、執筆者個人の経験・調査・意見に基づき作成されています。
