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挑戦者たちの奮闘記執筆者にAgriweB事務局がインタビューをしました。
就農に向けて本当に一から取られた行動を伺いました。当時、具体的に取られた行動の一つ一つを今ではどのように振り返っているかを教えていただいたものです。
今回は、茨城県 で年間50品目を超える野菜を生産される『マーフィーズファーム』の篠塚政嗣さんです。
・マーフィーズファームinstagram
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AgriweB
- 質問:農業を始めようとした時、”最初”に取られた行動はなんでしょうか?
篠塚さん
- 答:市役所の農業委員会、農政課に相談に行きました。
- ・そこで、この地域で就農するためには5反(50a)の畑を用意する事を知りました。
・当初はあくまで中心となるのは祖父で、祖父の農園で基本を学ぶ、というイメージを考えていました。それが就農のためには自身の畑も持たなければならないと知り、祖父の畑の一部を承継いたしました。
・細かい部分ですと、50aのうち、親族からの承継は50%未満までという当該地域における農業委員会での条件がございましたので、残りは近隣で使っていない農地を探しました。(これは比較的簡単に見つける事が出来ました。)

篠塚さん-
答:それと、農業関係の本を探して読んだりしました
- ・インターネットで情報を探したかもしれませんが、農文協で窒素・リン酸・カリであったり、土の保肥力、炭素窒素比などを調べていた記憶があります。
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AgriweB
- 質問:そうしますと、よく言われる「農地」取得について、情報収集はそれほどではなかった感じでしょうか?その他はいかがですか?

篠塚さん- 答:そうなります。祖父が体調を崩して農業をやめるという状況下、農地を承継する予定だったので。ただ、就農する地域の農業委員会において親族からの承継は50%未満という条件があったので、近隣で使われていない農地を探す必要がありました。比較的簡単に見つかったのは、もしかしたら運がよかったのかもしれません。
- ・結果的に農地はそこまで調べることにならなかったのですが、就農するために最低限何が必要であるかを調べるために農業の普及指導センターを訪問したりいたしました。
・センターは、おそらく全国にあると思います。ご自身の欲しい情報があるか否かは人によりけりかもしれませんが、丁寧に対応していただきました。個人的には訪問して損はないと思います。
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AgriweB
- 質問:今振り返ってみて、”ここに相談・連絡してよかった”と思った先はどこでしょうか?
篠塚さん
- 答:私の場合は、現在の圃場の周辺の方々でした。
- ・私の圃場は周辺に畑しかないようなところにあり、長年経験を積んだ農家さんが沢山いらっしゃいます。それらの方に、どんどん質問できるような関係を築いてよかったと思っています。
・私は、そこにお住まいの方でないとわからない情報はやはりあると思いますので。
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AgriweB
- 質問:農業は、閉鎖的ではないか?しがらみがあるのではないか?というイメージも正直あると思います。この点、実際にはいかがでしょうか。すんなりと入り込めるものでしょうか。
篠塚さん
- 答:閉鎖的、しがらみというものは私の生産している結城市の方ではありませんでした。
- ・当然、つっけんどんな対応をされることもありましたし、あります。ただ、機会を捉えて声をかけるなどしていき、多くのことを学び吸収しました。そして、感じたのは、同じ地区・作物の栽培方法一つとっても多種多様だということです。時に真逆なことをそれぞれの農家さんで仰ることがあります。最後選択するのは自分ですね。
・しがらみみたいなものは、あまり経験してきていないです。寧ろ、会合等に出ないといけないかなと思い、自主的に登録させていただきましたが、年二度の草刈りについて今回人数足りているから無理しないでねと気遣ってくれたこともあったくらいです。
篠塚さん
- 答:地区への参加が任意であるのは、共同出荷主体ではなく、市場出荷が主であることも影響している可能性はあります。
- ・私の場合は、そして私の周辺は市場出荷が主です。そのため、例えば白菜であれば目揃え会はあるけれど、それは任意参加の世界です。
・出荷する市場の担当者が中心となって目揃え会の連絡がメールなどで来て、そこに任意で参加するというものです。
・長所短所両方を述べるとしたら、全てが自己責任という世界ではああることでしょうか。
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AgriweB
- 質問:就農までのステップを改めて伺えますでしょうか?
篠塚さん
- 答:本で調べる⇒普及指導センターを訪問する、というステップを踏みました。一般的には、この後、農業学校に行くか農家に修行に行くかしないと計画等は認められにくいのではないかと思います。
- ・私の場合は、何十年も農業を営んでいる祖父に教わりながらでしたので認められたのだと思います。
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AgriweB
- 質問:就農を迷っている内から準備しておいて損はない、というものは何かありますでしょうか?
篠塚さん
- 答:体験してみる、ということだと思います。
- ・がっつり勉強してみるとかではなく、どこか貸農園で体験してみる等で良いと思います。
・作物が生産できるようになって損はありませんし、何より農業は好き嫌いがハッキリと分かれる職業だと思うからです。
・まったく儲からなくても深くハマる方もいらっしゃいますし、合わなくて離農してしまう方もいらっしゃいます。まず体験してみないことにはご自身の好き嫌いが分からないのではないでしょうか。
・また、価値観も多様化していますし、生産者と消費者という分け方はもやは馴染まないと考えています。薄く農業に携わる方が増えることで、国内の生産力が押し上がる形があっても良いと思います。
編集後記…祖父が営んでいた農業をご両親が承継せず、お孫さんである篠塚さんが承継されたとのことです。また、地域で農業は儲からないとの認識が浸透しており、農業を継ぐことに周囲が懐疑的であったことが影響していたのが背景にあったため、ご両親は農業を承継せず就農も勧めなかったとのことでした。
しかし、篠塚さんは就農され、そして地域で信じられていた農業は大量に生産し”薄利多売”方式で経営していくという方式に対し、本当に選択肢はその一つだけなのだろうかと疑問を抱き、小規模農家としての歩みを模索され始めました。生産は地域の皆様から教わることは出来る一方、小規模農家に合う販路を見つけることは教わることが出来ず、まさしく自己責任の世界。
JAへの全量出荷ではなく、ご自身で出荷する販路や市場を見つけ出し、”売り方”についても固定観念を持たず探っていくという選択に「怖さはなかったのか?」と思わす問いかけました。そして、「開き直りですよ」と笑顔で答えてくださったことが大変印象的です。篠塚さんのインタビューにもあった”好き嫌いが分かれる職業”という言葉は、この”開き直り”という発言を笑顔で出来るか否かに集約されているような気がいたします。
国内の農業の裾野が広がることの一助を担うことが株式会社AgriweBの一つの目的ではありますが、農業が合わない場合には勇気ある撤退も選択肢ではないかと感じたインタビューでした。本インタビューが今後就農を考えられている方に対し、少しでもご参考になるようでありましたら幸いです。
当該コンテンツは、執筆者個人の経験・調査・意見に基づき作成されています。
