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(埼玉県 『横田農園』 横田 進)
埼玉県吉見町で農園を運営している横田と言います。
「農業は勘」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。その感覚は、数々の失敗を経験して磨いていく(前回コラム)と共に、自らの地域の風土について理解を深めていくことでも養われていきます。今回は当地域の風土を読み解きながら、私が培ってきた取るべき行動についてお送りしたいと思います。
「当地域の風土について」
有利な条件
・ 日照量(12月〜3月)は、タブン全国トップクラスです。
・ 平坦地で日影がありません。
・ 粘土質で投入した養分が流れ出しにくい。
・ 北西の冷たい寒風が強く芯から冷えます、これにより作物は凍結防止のため糖分を多く蓄積します。
・ 冬場は病害虫もほとんどいないので防除も少なくて済みます。
不利な条件
季節と気象
・8月下旬から10月上旬の水害。
①8月下旬から9月上旬にかけて上陸する台風は九州からやってきます、この場合は関東に来た時には勢力はかなり衰えていて被害は出ません。一方で9月下旬〜10月上旬の台風は、近畿地方辺りから上陸するので、勢力が衰えずに大きな被害をもたらします。以前伊勢湾台風というのが最も被害が甚大でした。天気予報は一律に大型台風の注意警報が出ます。地域特有の細かい所までは考慮しません。私の場合は台風のコースに常に注目し風速を予想して行動します。
②また千葉県沖を通過する台風については、偏西風に乗れないのでゆっくり時間を掛けて通過してゆきます。この場合は風はそれ程吹きませんが雨雲が長く居座ります。ここで問題となるのが連続して台風が来たときです。1回目の台風でダムや河川に水が排水しきれないまま、2回目の台風がくると必ず河川が溢れます。これを想定して水に対する備えをします。
③こんな形で当地域の農家は対処してきたのですが、3年前から台風の発生が早まりコースも昔と変わってきています、以前の経験が全て当てはまらず、経験値も修正しながら農業を行っています。強固な施設を建てるには大きな設備投資が必要で結果所得が残らないという事になります。実はもう一つ水に弱い事情があります。9月に入ると周辺の水田で地下水を汲み上げなくなり、地下水が上昇します、つまり自然排水が期待できません、一般的には苺苗の定植直後は少量多潅水が指導されますが、そんな事をしたら通路に水が溜まり泥水の中で苺の収穫を迎える事になります。
そんな事情から8月下旬〜10月上旬は水で苦しむことになります。
・2月上旬〜4月の大雪と突風。
