公開日
(熊本県『天草農工房ふぁお』筒井洋充)
はじめまして。筒井洋充と申します。熊本の天草でデコポンのブランド名で知られる柑橘を栽培しています。
「もし、あのときに戻れるとしたら」誰もが一度は考えたことがあるはずです。脱サラして10年の節目を迎えた私が思うのは、「あの補助金は本当に必要だったのか?」ということです。
補助金は役所をはじめ、税理士や中小企業診断士などの士業も、地元の農家も話題にする最頻出テーマといってもいいかもしれません。私も補助金を活用しました。しかし、今思うと補助金はできるだけ使わない前提でいた方が健全だと私は考えています。そう考える理由は2つです。
自腹を切らないからどんぶり勘定になる
1つ目は、補助金は新規就農者に大きな借金を背負わせる可能性が大きいからです。たとえば施設栽培のためのハウスを建てるときは、大きさやスペックにもよるものの、数十万から数百万のお金がかかります。何棟も建てる場合は、1,000万円を超えることもあるでしょう。
ところが補助金はあくまで補助ですから、後払いです。メインの資金としては使えないので、先にお金を用立てる必要があります。貯金を使うか、借金をするしかないですね。どうせ後で補填されるのだし、貯金を使っても問題ないと思うかもしれませんが、それはちょっと危険だと思います。
農業は栽培をはじめてからお金が入ってくるまでの時間が長い上、その年にどのくらいの収量が上がるのか、売上がいくらになるかを見込むのは難しいはずです。ですから、現金はできるだけ手元に置いておいた方がいいと私は思います。
「補助金を使うなら値上げします」
それなら、借金すればいい。仮に100万円でも50万円の補助が出るのだから、と。それが落とし穴です。
実際、熊本に来て間もない頃、水道の蛇口交換を水道工事も請け負うガス業者に依頼したら「補助金を使うなら、工事代金は高くします」と言われたことがありました。移住者の受け入れに熱心な自治体には、移住者の引っ越し費用やリフォーム費用の一部を補助してくれる仕組みがあります。その業者の態度に腹が立った私は別の業者に依頼しました。
「補助金でどうせ半分は戻って来るのだから」と、業者の言うとおりにしてしまうかもしれません。でも、もし全額自腹だったら入念に計画を立て、費用も抑えようとするのではないでしょうか。オーバースペックなものを避け、中古品も視野に入れるはずです。ところが補助金は多くの場合、新品の購入が前提なので費用が膨らむ傾向にあります。それで借金が増えるのです。
古くなったら・壊れたらどうするか
2つ目は、補助金の対象は初期費用だけで、
