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(熊本県『天草農工房ふぁお』筒井洋充)
はじめまして。筒井洋充と申します。熊本の天草でデコポンのブランド名で知られる柑橘を栽培しています。
「農業は自然相手の仕事」なんとなくわかったつもりになっていましたが、就農前の私はこれがどのような意味なのか、具体的にイメージできていませんでした。しかし、10年経った今ならわかります。今回は農業のリスクをどう考えるか、という話をしていきます。
気温・湿度チェックで安全・健康を管理する
航空会社の職員だったこともあり、昔から私は他の人に比べて、台風や雪などの天気を気にする方だったと思います。農家になってからは、そこに気温と湿度が加わりました。農薬をまいたり草を刈ったりするには、気温と湿度が作業効率に大きく影響するからです。
農薬をまくときは長袖長ズボンの上に、雨ガッパを着ます。霧状になった農薬が目に入ったり、吸い込んだりしないように、防毒マスクのようなマスクで顔全体を覆います。夏場の真っ昼間にこんな格好で作業していては、熱中症で死ぬかもしれません。早朝から作業をはじめ、こまめな水分補給に加えて、準備段階からの天候チェックはリスク管理のひとつといえるのです。
暑いのでマスクや雨ガッパを省略する人もいますが、安全面を考えればきちんと着用した方がいいと私は思います。農薬は指示どおりに使っていれば問題ないとはいえ、目や口に入ると痛みやかゆみを引き起こすこともあります。軽装で何年も作業を続けていれば、体にダメージが蓄積されていくでしょう。長く働き続けるために、安全と健康管理はとても大切です。
適切に農薬を使って品質を管理する
それなら「農薬を使わなければよいのでは?」という声もあるでしょう。いろいろな考え方があるものの、私は日本では農薬を使わない方が危ないかもしれないと思うこともあります。
ご存じの通り、温暖湿潤の日本では病害虫やカビが発生するリスクがとても高いからです。柑橘の皮を利用するレシピでは、農薬を使っていない方が安心と勧められますが、カビは適切に管理しないと見た目が悪いだけでなく、それを食べる人の健康を損なう恐れもあるでしょう。
以前、岩手県で作った小麦からカビ毒が検出されたというニュースがありました。関連性は不明ですが、その小麦を使っている学校のいくつかで体調不良の子どもが出ていたそうです。
