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(石川県『菜園生活 風来』西田栄喜)
志を学ぶために入塾した青年塾。もう20年近く前になりますが、その時に通ったことが今も精神的な支柱になっています。
志があるからこそ継続している企業や事業
そんな志をテーマにした青年塾のカリキュラムのひとつに現地現場で学ぶというのがあり、志のある企業や、志があるからこそ継続できているところでの視察、体験がありました。
伊勢神宮講座
そのひとつが伊勢神宮講座。伊勢神宮近くの修養団 伊勢青少年研修センターで行われました。我が家は曾祖母、両親が信心深く家には立派な神棚があり、小さい頃から榊やお神酒をささげ柏手をうつのが日課となってました。それでも神道のことはまったく教わっていませんでした。時代的なこともあったかと思います。
そんな感じで青年塾に入るまではほぼ知識がなかったのですが、講座で「神道とは何か」をグループで発表することになり、事前勉強。図書館で神道関連の本を借り読みふける中で「日本人でありながら何と無知だったんだ」と思い至りました。
日本書記や神話など非科学的だと思っていたのですが、ここまで継続されてきたこと自体すごいことだと感じ、また日本のなりたちには稲作が深く関わっていることがあらためて分かり、農家としてとても興味深く思いました。そんな事前知識を持っての講座だったのですが、実際に行ってみると「何事のおはしますをば知らねども かたじけなさに涙こぼるる」(真言宗の僧侶だった西行が伊勢神宮で詠んだとされる)が実感できる何か圧倒的な存在感がありました。
言葉だけで伝えることの限界を感じる
そんな伊勢神宮講座では神宮に流れる五十鈴川での禊も体験。2月のまさに極寒期に川の中に白装束で浸かる。正直なぜこんなことをと最初思っていたのですが終わったあと清々しい気持ちになり、また同じ体験をした同期との絆も深まりました。
伊勢修養団の大講堂には「流汗悟道」と書かれた掛け軸がかかっています。流汗悟道(りゅうかんごどう)とは文字通り汗を流すことで真理や道を悟るという意味を持つ言葉です。ただ知識を得るだけでなく、実践し体験することで初めて真実が理解できることが示されています。
これは農業にも通じるものだと実感して、農業のよさを伝えるには言葉だけでは限界があると感じて、それから体験教室を積極的に行うようになりました。
農業を続けていくことの礎となる志を賜る
あと伊勢神宮での学びに式年遷宮がありました。式年遷宮とは20年に一度、社殿と神宝を新調して大御神にお遷り願う神宮最大の神事になります。「なぜ式年遷宮があるのか」「期間が20年なのか」は所説あります。「石ではなく木の文化なので更新していく必要がある」や「職人の技術承継のため」などなど。いずれにしても建て直してきたからこそ1300年続いてきた、剛ではなく柔の発想に先人の知恵のすごさを感じました。
オーストラリアに1年滞在していた時によく訊かれたのが「あなたの宗教は何?」でした。当時はうまく答えられず「No religious(無宗教)」と言って怪訝な顔をされたのですが、今ならもっとうまく答えることができると思います。例えば祭日は元々皇室の祭典や神社のお祭りなど、宗教儀礼を行う日(新嘗祭→勤労感謝の日など)だったなど生活に密着している。そのように生活にあまりにも浸透しているので無宗教と思ってしまったのかもしれませんが、それこそまさに「道」なのだと思い、日本人であること、農家であることに誇りを持ちました。
35歳まで一度も行ったことがなかった伊勢神宮ですが不思議なものでそれから5回ほど行くこととなりました。知ることで興味がでてそうするとご縁が広がる。日本は瑞穂の国と言われますが、日本人にとって米は食糧というだけでなく文化としてとても大切だということが分かり、守っていかねばならないとあらためて感じることができました。
それから日本人、特に農家には一度は伊勢神宮にと薦めています。
志のある企業
志ある会社ということで講座で訪れたのが伊那食品工業になります。こちらも青年塾に入るまでは知らなかったのですが、それから何度も行くくらいファンになった会社です。
