(公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 平澤 允)
「5S+1S」とは?
前回のコラムにて、カイゼンについて詳しく述べて、その手法として「5S+1S」と「ムダ取り」について概要を紹介しました。
「5S」とは「整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Shitsuke)」、「1S」とは「安全(Safety)」を意味し、それぞれのローマ字表現の頭文字Sをとって「5S+1S」と表記されます。(整理・整頓を合わせて2S、そこに清潔を加えて3Sと呼ぶ場合もあります。)
今回は、「5S+1S」のうち「5S」について詳しくご紹介します。
5S活動
① 必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる「整理」
整理は要らないものを捨てる活動です。必要か不要か区別するためには、「何が必要か」「いつ必要か」「どれくらい必要か」を明確に決めることが重要です。
整理の活動で一番簡単かつ取り組みやすいのは、「赤札作戦と黄札作戦」と呼ばれるものです。
作業場や倉庫等にあるすべてのものに、
・捨てるものには赤い印
・今のところ使わない(または用途が分からない)ものには黄色い印
というルールで下図のように(テープ等で)赤い印と黄色い印を貼ります。すぐ使うものには印を貼らず、作業場の近くに置きます。
印の貼ったものは一旦まとめてそれぞれ別の場所へ置きます。そして、赤い印のものは即時適切な方法で廃棄、黄色い印のものは期間を定めて保管し、その期間中に使用しなければ廃棄します。
この作業は段階的に行うのではなく、「大掃除」など日を決めて一度に行うことを推奨します。このように整理を行うことで作業場や倉庫・事務所の中は驚くほど物が少なくなっていきます。
② 必要なものをすぐ使えるようにする・すぐ取り出せるように工夫する「整頓」
整頓は、「定位置(置き場を決める)・定品(決まったものを置く)・定量(決まった量を置く)」という原則に基づいて、使いやすくものを置く活動です。
以下2枚の写真を見比べてみてください。ここからカッターを見つけようとした場合に、どちらの方が早く見つけることができるでしょうか?
整頓しておくことで、一目で取り出すことができますし、誰かが使っていてそこにない場合も瞬時にわかります。
置き場の整頓をする際のポイントは以下の2つです。
・必要なものを探さなくてもすぐ取り出せる
・楽にものを取り出せる
倉庫内の整頓では、以下の写真のように棚を設けて物の置き場・名称やメーカー・数量などを記載したラベルを貼ります。さらに、頻繁に使用するものについては、容易に取り出せるように腰から肩の高さの位置にある棚に配置することで作業者の負担を軽減することができます。
③ 掃除をして常にきれいにする「清掃」
清掃は、作業場・職場をきれいな状態にしていつでもすぐに仕事ができるようにする活動です。すなわち、単に掃除をするだけではなく、機械が正常に動作するかを確認することや、私用した道具類は定位置に戻すことも含まれます。
清掃においては以下の3点が重要です。
・すぐに清掃ができるように清掃用具を近くに用意する
・清掃の範囲や担当者を明確にする
・清掃状態をチェックする仕組みをつくる
清掃が重要である理由に、割れ窓理論という考え方があります。これは、「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていない象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」というものです。
換言するなら、「清掃せずに汚い状態を放置すると、すべての物が汚くなっても誰も気を留めなくなり、より汚れていく」ということです。
より良くするという小さな積み重ねで成立するカイゼン活動を進める為にも、清掃は大切な活動と言えます。
④ 3S(整理・整頓・清掃)を維持する「清潔」
清潔は、①~③で紹介した3Sを職場の風土として定着させることです。特に、使った物は放置しないで片づける、元の位置に戻すことを習慣づける等が大事です。
きれいな職場であると、汚すのが申し訳ない気持ちになり、きれいな状態を維持しようとする意識が自然と働きます。
⑤ 決められたルールを守る「躾(しつけ)」
躾は、5S、安全、作業手順など職場で決めたルールを遵守し、一人よがりな行動はしないという活動です。5Sは、その場限りの活動ではなく、5Sを永続的に推進することで組織文化として定着させることが重要です。
次回は、「5S+1S」のうち、「+1S(安全、Safety)」について詳しくご紹介します。
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当該コンテンツは、公益財団法人日本生産性本部の分析・調査に基づき作成されています。
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