(ニュージーランド大使館商務部/ニュージーランド貿易経済促進庁)
① 労働力不足の解決:ニュージーランド アグリテックのロボティクス・自動化技術
ニュージーランドはその基幹産業である農業の生産性を、アグリテックという新たなテクノロジーを起点とする営農活動の抜本的な刷新(イノベーション)により高めてきました。
小さいながらもバラエティに富んだ地形・環境を有す国土は、多種多様かつ豊かな農産物の生産を可能にする一方で、農業従事者に様々な課題を突き付け、ニュージーランド アグリテックは、農業従事者と共に、それら課題を乗り越える度に進化してきた、ともいえます。
加えて、農業輸出国として、消費者嗜好や人口構造の変化、気候変動など、経済発展と共にダイナミックに変化し続ける世界の農業市場に対応していく中、農産品と共にアグリテックの質も磨かれ、更にはアグリテック単体として輸出されるようになり、各国で高い評価を得るに至りました。
本稿では、進化を続けるニュージーランド アグリテックの中から、特にロボッティクスや自動化技術によって「労働力不足」を解決する企業をご紹介します。
広い農地と少ない人口が、労働力不足解決ソリューションを進化させた
ニュージーランドの農地面積は国土の43%を占める約11,260,000ヘクタール。農家一戸当たりの農地面積は実に270ヘクタールと広大です。
日本の農家一戸当たりの農地面積は1.3ヘクタールですから、実に200倍以上の生産性をもって、広大な農地を非常に効率的に運営・管理できていると言えます。
それを可能にしているのが、独自の進化を遂げたニュージーランド アグリテックです。果樹の収穫など機械化が進みにくい作業現場にも果敢に先進的なロボット技術を導入している他、剪定や選別作業、パッケージングまで、これまで人手に頼りがちなあらゆる作業現場にロボティクスや自動化といったソリューションの導入が進んでいます。
Robotics Plus(ロボティクスプラス)
(画像:Robotics Plus, NZ AgTechStory より引用)
機械化や生産プロセスの自動化、センサー技術に強みを持ち、リンゴやキウイなど農作物を収穫する技術を提供しています。例えば、キウイの完全自動収穫機は、キウイの場所の感知・移動・カット・収穫までを自動で行い、圧倒的な労働力の省略化を実現しています。
ニュージーランドでは年間約30億個のキウイがこの自動収穫機で収穫されています!
Waikato Milking Systems(ワイカトミルキングシステム)
(画像:Waikato Milking Systems, NZ AgTechStory より引用)
酪農における搾乳に特化した技術を提供しています。牛、ヤギ、羊のミルキングパーラーや自動搾乳機、搾乳量などの管理ソフトウェア、乳製品保冷技術等、その画期的な技法と生産効率の良さ・搾乳にかかる作業の省略化が評価され、ヨーロッパやアメリカ、中国など世界中で使用されています。実際に1時間で500匹のヤギの搾乳を行うパーラーや1日に1600頭の牛を搾乳するパーラーなど、ニーズに応じて大規模搾乳パーラーを提供しています。
Greentech Robotics(グリーンテック・ロボティクス)
(画像:Greentech Roboticsウェブサイト, ‘WeedSpider’)
商業用の野菜生産者向けに種まきや除草など重労働作業を機械化する技術を提供しています。等間隔で種をまく精確な計測技術を持った自動種まき機や、内蔵されたカメラやセンサーによって除去対象を判定する自動雑草除去ロボット”WeedSpider”の開発を手掛けています。
特にWeedSpiderは、世界で初めて除草作業の完全機械化を実現した24時間丸一日稼働可能な最新ロボットで、除草と同時に間引く機能も備わっており、農作物の生産性向上が期待されます。
Hydralada(ハイドララダ)
(画像:Hayraladaウェブサイト)
背の高い農作物を安全に管理・収穫するための耕作重機を専門として扱っています。シンプルなデザインのリフトは最高10mまで伸び、収穫や剪定、付属スプレーでの洗浄や農薬散布など、作業を効率的に行うための機能が備わっています。
世界各国に導入が進んでおり、例えばサウジアラビアではパームの栽培、中国ではリンゴ栽培、オーストラリアではバナナの栽培に適した可動式リフトや剪定ばさみなどを提供しています。
このように、ニュージーランドでは農作業の機械化や自動化があらゆる場面で進んでいます。これらの技術はすでに世界各国で採用され、各国独自の事情に合わせたカスタマイズが施され、課題を解決したことでその有効性が実証されています。
高齢化が加速度的に進み、労働力不足がますます深刻になっていく日本においても、非常に有効なソリューションとなることが期待されます。
次回は、「②育種/畜産/動植物の健康管理:ニュージーランド アグリテックのバイオテクノロジー・ソリューション」と題し、生産性向上に貢献するバイオテクノロジー・医薬品などの動植物の健康管理技術等ご紹介します。
シリーズ『日本とそっくりな島国。ニュージーランドの農業技術』のその他のコラムはこちら
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