これからの農業者に必要とされる「経営力」
農業をこれからはじめたいと考えた場合、まず思いつくのが農業技術を身につけることだと思います。農業を経営していく上では農産物を生産できることが前提になりますので、これは当然のことと言えるでしょう。
しかし、これからの農業経営で必要とされる力は、農業技術のみに留まりません。農業者の高齢化による大量引退が目前に迫る一方、一層のグローバル化や消費者ニーズの細分化、環境問題、地域機能の低下など、農業と食を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
その中で持続的な農業経営を行うためには、数多くの情報から正しく必要な情報を取捨選択する力や広範な経営的知識に加え、それらを前提とした綿密な準備が必要となります。
新規就農者が離農する理由とは
農林水産省の調査によると、49才以下の新規就農者は令和2年度で1万8,380人と、前年度に比べ0.9%の減少。(農林水産省「令和2年新規就農者調査結果」)。
さらに、せっかく農業の世界に飛び込んだ新規就農者が定着せず、離農してしまうという課題もあります。
少し前の調査になりますが、一般社団法人全国農業会議所 全国新規就農相談センターの行った「新規就農者の就農実態に関する調査結果-平成 28 年度-」によると、おおむね農業所得で生計が成り立っていると回答したのは新規参入者全体の 24.5%にとどまっており、就農後の経過年数が長くなるに従い、農業所得によって生計が成り立っている割合は高くなるものの、就農後 5 年目以上でも、半分程度は農業所得によって生計が成り立っていないとの結果が出ています。
総務省「農業労働力の確保に関する行政評価・監視 -新規就農の促進対策を中心として- 結果に基づく勧告」の離農理由の調査においても、本人の個別の事情によるものに次いで、低収入など経済的な事情によるものが多いという状況がみられています。
「経営力」で世の中の急激な変化に備える
このようにそもそも農業を経営すること自体が難しいと考えなければなりません。
これと併せて農業を取り巻く環境が更に変わってくることに鑑みると、新規就農者のみならず、実家が農家を経営している場合であっても、単に親の農業技術と経営基盤を引き継ぐだけではなく、急激に変化する世の中で農業を経営していけるだけの力量を持ち、備えておくことが必要になってくると言えるでしょう。
事業の成功のために必要な「経営計画」
備えることの必要性は理解できたが、何から手をつければ良いのか分からない。すべきことやできること、面白いアイディアは沢山あるけれど、どのように整理して進めるべきかが分からない。そうした方は多いでしょう。
しかし、実はこういった悩みは農業に限ったことではありません。食品工業など他の産業でも同じで、そうした産業ではすでにそれを解決するための整備された「型」と呼べるものが確立しています。それが「経営計画」と呼ばれるものです。
「経営計画」とその構成要素
経営計画とは事業コンセプトを明確化し、どのように達成するのかをまとめたものです。
自らの農業を実践する上で必要となる経営計画を策定する中で、あらかじめ事業の実現可能性や発展性、あるいは問題点やリスクを確認し、その対策を講じておくことで安定的な事業が確立できる可能性を高めることができます。経営計画の構成要素はおおよそ以下の様なものです。
まず、会社や自身の存在意義、任務や使命である「ミッション」や会社や自身が目指す将来の理想の姿である「ビジョン」を定めます。
次に強みや弱み、環境分析の結果から戦略・ビジネスモデルを設定し、それを実現するための具体的な計画(戦術)として生産計画、販売計画、財務計画に落とし込んでいきます。
また、温暖化による集中豪雨の農産物への被害などからも分かるとおり、農業は自然を相手に生きものを生産する産業です。その為、2次、3次産業以上に多様なハザード(危害)が存在し、より多くのリスクにさらされていると言えます。
経営規模が大きくなり、6次産業化や他業種との連携等によって事業内容が複雑化するにつれ、リスク管理が経営の命運を左右することも考えられます。そういった要因も慎重に検討しなければなりません。
とはいえ、これだけの情報で経営計画を作れる様な人はまず居ないことでしょう。自力で作ることに挑戦する場合、関連する手引書や参考図書、インターネットの記事等からかなりの時間と手間をかけて勉強する必要がありますが、策定する意義や効果を考えれば努力してでも作るべきだと言えます。
やりたい農業を実践するための「経営計画」を日本農業経営大学校で作る
日本農業経営大学校では卒業後自らの農業を実践する上で必要となる経営計画を在学中に作成することを必須としています。
在学中に経営的知識に加え農業経営に必要なことを学ぶと共に、自身や自社を取り巻く環境分析等を綿密に行うほか、指導教員や外部の方からも直接経営計画策定に関する指導を受けることができます。
在学中の2年間をかけて経営計画を練り上げることで、卒業後に自身が行うべきことが明確化された状態で卒業することができます。
もし、経営計画を策定したいが自分だけでは不安といった方や、同時に農業経営者として必要なスキル等も学びたいといった方は、ぜひ日本農業経営大学校への進学を検討してみてください。
日本経営大学校 卒業生の実例(アグリウェブ記事)
これまでの卒業生は、北海道から沖縄にいたる全国各地で就農し、在学中に自らの手で創り上げた「経営計画」の実現に向けて奮闘しています。
第1回:徹底した差別化戦略でお客さんに選ばれる農園へ(中村美紗さん、第3期生)
第2回:公認会計士から農業経営者の道へ(石川法泰さん、第3期生)
第3回:大人気のいちご観光農園を手掛ける「経営者」(井上隆太朗さん、第2期生)
第4回:経営者の父に代わり入学し、学びを活かす(西岡源起さん、第2期生)
第5回:多くの人々のテーブルに花を届けたい(山口雅暁さん、第4期生)
第6回:自然の循環を意識した養豚業(農山文康さん、第4期生)
日本農業経営大学校での2年間の学びは、同じ志を持って全寮制で生活を共にする学生や卒業生間のつながり、各種実習やフィールドワークでお世話になる全国各地の先進農業者、会員企業・団体との貴重なネットワークが得られ、それらが就農後の大きな財産となります。
農業に熱い思いを持った若者が日本農業経営大学校で学び、成長し、これからの農業をリードしてくれることを期待しています。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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