(株式会社ルートレック・ネットワークス)
去る7月20日(水)〜22日(金)に東京ビッグサイトにおいて、「施設園芸・植物工場展2022(GPEC)」が、(一社)日本施設園芸協会の主催により開催されました。
2年に1度の開催がされてきた本展示会は、コロナ禍の影響や東京オリンピック開催のため4年ぶりの東京開催となり、新たな機器やサービスの出展も多数ありました。
本記事ではスマート農業関連の出展、特に環境モニタリングや環境制御関連のジャンルに触れてみます。
それらのジャンルでは、施設園芸の全国メーカーによる商品がすでに多数提供されています。
GPECではそうした出展だけでなく、地方メーカーやベンチャー各社による出展もあり、特徴的なものをいくつかお伝えします。
らくラックEvoマスター(統合環境制御システム)
山口県に本社のある再生プラスチック製品製造業の(株)サンポリでは、イチゴ高設栽培システムや、果菜類の隔離栽培ベッドなどの製造販売を行っています。
山口県との共同研究で、これら栽培装置向けの統合環境制御システムの開発を行い出展をしました。
その概要が参考文献1)に山口県農林総合技術センターの成果情報として紹介されています。
文献では、ハウス内外の環境モニタリングと制御機能を持ち、UECS規約に基づく情報通信が行われ、Arsproutクラウドと連携し各種端末からモニタリングや遠隔操作が可能とあります。
第3回のコラムで紹介したUECSにも対応したシステムになります。
また個別に必要であった換気装置制御盤やCO2施用制御ボックスなどは統合され不要で、オプションで土壌水分の PF 値計測を追加可能とあり、簡素化と拡張性が考えられた設計と思われます。
さらに「県内ベテラン農家のハウス管理に学んだ「農の匠」プログラムを作成中であり、本機の初期設定プログラムとなる」とあり、出展では山口県内向けとしてイチゴ栽培用とトマト栽培用の初期設定が導入済みとのことでした。
とりあえず使い始める際には便利な設定機能と言えるかもしれません。
文献には山口県内向けの標準価格も紹介されており、比較的低コストなものとなっています。山口県外での販売も同社を通じて行われています。
ハウスファーモ(ハウス環境モニタリングシステム)
栃木県に本社のあるIT専門開発会社の(株)farmoでは、データベースや通信の技術により、クラウドを利用し、水田用の水管理システムの水田ファーモやハウス環境モニタリング用のハウスファーモを開発、販売しています。
同社では「水田ファーモ」においてすでに1万台の販売実績があるとのことです。
ハウスファーモは、同種の環境モニタリングシステムと様々な差別化がされています。
例えば、太陽電池とバッテリーを用いた独立電源式のセンサー本体を配線不要で設置可能なこと、多種のセンサーを持ち様々なデータ(気温、湿度、照度、CO2濃度、地中温度、成長点温度、飽差、EC、土壌水分など)を1台で計測可能なこと、通信ユニット(LPWA方式)を通じ複数のセンサー本体を長距離間で接続しアプリケーションでデータの閲覧や共有化も可能なこと、などがあげられます。
また作物に合わせセンサーを選択できる仕様であり、地元栃木県で盛んなイチゴ栽培についても生長点付近の温度計測が可能なよう設計されています。
はかる蔵(ハウス環境モニタリングシステム)
大分県のリバティーポートジャパン(株)では、はかる蔵を出展しました。
同社に関する情報は公表されていませんが、JA全農の展示ブースに置かれた製品が多くの来場者の目に触れたものと思います。
販売はJAを通じても行われ、すでに九州など全国の産地に普及しているとのことです。
展示では通信機能を持つ親機と、センサー接続をする子機、およびスマホによるモニタリング画面のデモが行われ、特に画面操作が軽快に行えることが特徴的です。
はかる蔵に接続可能なセンサー類は、気温、湿度、CO2濃度、日照、日射量、地温、油量、土壌EC、pFとのことで、また機器の制御を行う「うご蔵」の展示もされていました。
これはモニタリングだけでなく、制御へのステップアップにも対応したものと言えます。
同社ではアプリケーションにも力を入れており、日誌やスケジュール機能やデータ共有機能を持ち、環境データだけではなく様々なデータを取り込めるよう開発を進めているとのことです。
IoP(Internet of Plants)パッケージサービス
第2回のコラムでも触れた高知県での環境制御技術への取り組みは、その後も発展を続けて、現在はIoP(Internet of Plants)として、ハウス環境データの他、画像、出荷、微気象、作物生育、労務、エネルギー、病害虫など様々なデータをクラウドで扱い、データ連携によるシステム構築が進められています(参考文献3))。
また生産者向けのサービスメニューとしてSAWACHI(郷土料理の皿鉢料理が由来)が提供されており、生産や販売にかかわる様々なデータを閲覧でき、現場での活用も始まっています。
出展では、営農支援サービスとして、また指導員が活用できるデータ分析ツール等の紹介もされ、自治体やJA向けのIoPパッケージとしてアピールされていました。
高知県発のクラウドを活用したデータ連携の基盤として、今後の発展が期待されます。
おわりに
GPECでは(株)クボタの展示ブースにてゼロアグリの出展も行われ、多くの皆様にご覧いただきました。
またご紹介した製品サービス以外にも、スマート農業にかかわるもの、省エネや環境対応のものなど、時代のニーズに対応した多くの出展がありました。
次回GPECは、2024年に東京ビッグサイトで開催予定との案内があり、施設園芸経営を支える商品がさらに提供されることが期待されます。
株式会社ルートレック・ネットワークス
AI自動潅水施肥システムのゼロアグリの製造、販売をしています。
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