こんにちは。50代会社員向け「セカンドキャリア塾」を運営する大桃です。
前回は「農家と50代会社員の協働」という新しい選択肢について、富山県のハーブ園さんや、兵庫県の有機栽培農家さんの事例を交えてご紹介しました。今回は、50代会社員と一緒に取組むと相性の良い、具体的な業務内容や働き方、注意ポイントについて、解説します。
50代会社員の「得意」を活かし、自分たちの困りごとを解決する、業務の選び方
コロナ禍は本当に大変でしたが、唯一良かったと言えることは、全国あまねく「オンラインで誰かと何かをすることが一般化した」点ではないでしょうか。
50代会社員との協働「大人のインターンシップ」も、オンラインから始めるケースが9割以上。当然、向く業務・向かない業務があります。「大人のインターンシップが威力を発揮する業務」それは「急いでいないけれど、大事なこと」。
例えば、「直販できるお客さんを新たに見つけたい」「クラウドの会計ソフトを入れたいけれど、どのソフトがいいのか分からない」「紙の管理をもっと便利にしたい」など、「こうなったらいいな」と思いながら、手をつけられていない困りごとはないでしょうか?
当社の大人のインターンシップでよくある業務領域は、以下の3つです。(図1参照)
「次の戦略や新しい事業を考える」
「新しいお客さんを見つける」
「業務を効率化したり、働きやすくする」


特に、「専門家に相談するには、ちゃんと整理してからじゃないと伝えられない」と二の足を踏んでいる課題は、大人のインターンシップが向く仕事。
なぜなら、大人のインターンシップに参加する50代会社員の皆さんが日常的にやっているのは、何かしらの問題を見つけて、整理し、解決のアイデアを出し、優先順位をつけて、取組むこと。いわゆる「PDCAを回す」ような仕事です。
だから、「具体化していない」「ふわっとしている」「よく分かっていない」ことを一緒に考えるパートナーとして最適なんですね。
実は、まだ固まっていない課題を一緒に考えることは、50代会社員の参加者にとって「新しい学び」になります。ですから、「こんなちっぽけな課題でいいのかな」「整理されていなくて申し訳ない」と遠慮する必要はありません。
また、「大手企業の人だから、上から目線で身の丈に合わないことを言われるのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。
実は、当社のインターンシップ受入企業の満足度は100%、そのうち「期待以上」との回答も30%。嘘のようなホントの数字ですが、これも「学ぶ」研修プログラムの一環としての大人のインターンシップだからこそ、参加者は「自分の社内での経験を社会で活かしたい」「学びたい」という姿勢で取組むことが背景にあります。
50代会社員とのインターンシップ、研修生や農業アルバイトとは何が違うの?
期間限定で不足する労働力を補ってもらう選択肢として、研修生や農業アルバイトを受け入れている農家さんも沢山いらっしゃることと思います。私の祖父母もコシヒカリ農家でしたので、春と秋は毎週末、沢山の人たちと一緒に農作業をして楽しかった記憶があります。
こうした既存の選択肢との違いは、上述の業務内容に加えて、契約形態・費用・働き方の3つのポイントがあります。
研修生や農業アルバイトは一般的に、アルバイト等の期間限定の雇用契約となる一方、大人のインターンシップは秘密保持契約のみのボランティア(プロボノ)となります。そのため、業務のやり方を指示したり、業務に必要な備品を用意するといった義務は発生しません。
あくまでもお互いの意志に基づく協働となり、〆切ややり方を指定できない代わりに、無償での活動となります。
無償での活動となると「お願いするのは申し訳ない」と考えられる方もいらっしゃいますが「こういうことをやってもらいたい」とリクエストすることは全く問題ありません。「受入される農家さんがよりよい状態になるための活動」という大きな目的はお互い合意してスタートしていますので、そのために活動する内容は、あくまでも双方で擦り合わせて進めていくのです。
何だか難しそう・・・と思われるかもしれません。私はこの働き方を説明する時に、いつも浮かんでくるのが「百姓」という言葉です。農民のイメージが強い言葉ですが、元は「様々な姓」を意味し、「万民」との意味を持っています。以前から、農業に限らず、何らかの業は人の力を借り、結集しながら運営されてきたのです。
これまでは、地元や血縁の繋がりを中心とした「目に見える範囲」での活動でしたが、通信技術の発展により、ZOOMやLINEなどのツールを通じて、住む場所に関わらず、オンラインで安く気軽にやり取りできるようになり、地域の制約を越えて共に助け合える選択肢が生まれたとも言えます。
(インターン生とのオンライン会議の様子)
お互いの「想い」を叶えるために大切なこと
いいとこづくめのような大人のインターンシップですが、もちろん注意点もあります。それは「苦手だから、やっておいて」と丸投げすること。
「学びたい」「役に立ちたい」と思っての無償の活動だからこそ、日常の仕事をしながら、プラスアルファで取組むモチベーションが湧くのです。「どうせ片手間でしょ」と情報開示することに躊躇したり、「忙しいから」とやってくれたことに返事をする余裕もない状態の場合は、おススメしません。
「この人なら伝えても大丈夫」と思う相手に出会った時や、農業の閑散期など余裕のあるタイミングや、「どうしてもこれをやらなければ」と思う時に始めればいいのです。実際にご利用いただいている農家さんでも、繁忙期である収穫期の夏は避けて、冬にじっくりインターンシップ生と取組む、という使い方をしているところもあります。
(カブの品質管理工程をインターン生と作成)
北海道の蕪農家さんでは、蕪に黒点が出る病気に頭を悩ませ、品質管理の仕組みを作りたいと考えられていました。伴走したのは、化学メーカーで品質管理の仕事に携わる50代会社員の方。閑散期の冬の間、毎週のようにオンラインでミーティングを重ね、2ヶ月かけて品質管理工程が完成!社員の方が自分でチェックできるシートも作成してもらい、組織で品質管理に取組める状態になりました。
そして迎えた夏の収穫期。インターン生は北海道の農園まで足を運び、自分も蕪の黄色い葉を取り除くなど、作り上げた品質管理工程を「使ってみる」現場体験をしていました。楽しそうなだけでなく、実際に自分でもやってみることで改善点が見えてきて、早速社長に提案されている姿も印象的でした。(詳細はこちら)
(インターン生が現地訪問した時の様子)
仕事をする目的は、一つではありません。お金を稼ぐことはもちろん大事な目的の一つですが、「成長したい」「誰かの役に立ちたい」といった金銭以外の報酬でも人は活動をします。町内会の活動や、小中学生の見学受入や部活動のサポートなど、そういえば自分もやっているな・・・」と思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
文部科学省の調査*によれば、過去5年間にボランティア経験のある方は約3割、やっていないが興味がある方は約5割。雇用という選択肢だけに留まるのはもったいない。人口減少時代、新たな協働の選択肢も取り入れながら、共に成長していきましょう!
*参考資料)
2‐2‐2 ボランティア活動に対する国民の意識の概況:文部科学省 (mext.go.jp)
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