(三菱UFJニコス株式会社)
前回は農家の資金繰りの特徴とキャッシュフロー見える化の重要性について解説しました。
農業は、初期投資額が大きく、作物を育てて販売し収入を得るまでに時間がかかります。また、毎月売上があるわけではないため、運転資金について、年単位で資金繰りを考えておくことが重要ですが、そのような農家の状況に配慮して資金繰り改善に役立つサービスも提供されています。
では、農家ができる資金繰り対策として、どのような方法が考えられるのでしょうか。
ここでは、農家が直面する資金繰りの課題や、農協(JA)などによる資金繰りに配慮した決済方法、その決済方法が利用できない場合の対策を解説します。
農家の運転資金の資金繰りに関する課題
農家が資金繰りについて直面する代表的な課題は、売上代金が入る前に運転資金の支払期限が来ることがあり、そのあいだに資金不足に陥らないための対策を検討しなければならないことです。
農業を継続的に運営するためには、種苗や肥料、農薬、燃料の購入費、人件費などの運転資金が必要になります。これらは主に、まだ収入が入っていない播種期前後に発生しますが、売上代金が入る時期は播種期から数ヵ月後の収穫期のみです。
そのため農家では、先に費用を支払ってから、収穫期に売上代金が入るのを待たなければなりません。
つまり、費用の発生から売上代金が入るまでにタイムラグがあることをどう解決するかが、農家の運転資金の資金繰りを考える上での基本となります。
農家の運転資金の資金繰りを助ける仕組み
農家の負担を軽減するためにJAや仕入先事業者から提供されているのが、仕入費用などの支払いを収穫期まで先延ばしにできる仕組みです。その仕組みの主な例としては、以下のような、JAが行っているサービスや仕入れ先の事業者が慣習的に行っているサービスが挙げられます。
愛知県のJAで利用できる収穫期払い
愛知県の一部のJAでは、肥料や農薬、燃料などを購入する際、支払期限を収穫期に合わせて設定できるサービスが提供されています。当初設定した支払期限までに支払えば、基本的に利子は発生しません。
愛知県以外のJAでも同じような仕組みはありますが、利用条件や設定できる支払期間の長さ、決済方法などはJAによって異なります。
■ 収穫期払いのイメージ
北海道のJAで利用できる組合員勘定
組合員勘定(組勘)は、北海道内のさまざまなJAで実施されている、生産資材や生活物資の掛け売り制度です。
農家とJAの間で組勘口座を設定し、農家がJAから肥料などを購入するとこの組勘口座に計上されますが、すぐに引き落としはされず、後に農作物が売れた際の収入と相殺される仕組みです。掛けで仕入れられる金額の上限は、各農家が作成した営農計画書などにもとづいて設定されます。
北海道内のJA独自の仕組みで、仕入れから販売までJAを利用することを前提としたサービスです。
■ 組合員勘定のイメージ
JA以外の仕入先の事業者で利用できる請求書払い
農家の仕入先となる農業資材店、種苗店、石油商店などの中には、商習慣として、購入代金の支払期日を収穫期に設定している事業者もあります。収穫期直前に請求書が仕入先から届き、請求書に記載された支払期日までに支払う仕組みです。
■ 請求書払いのイメージ
JAの仕組みや収穫期直前の請求書払いを利用できない場合の対策
JAの仕組みや、仕入先の事業者が収穫期直前の請求書払いに対応していない場合は、基本的には購入時に費用を支払わなければなりません。しかし、そのような場合に少しでも支払いを先延ばしにして資金繰りを楽にできる方法として、クレジットカードが活用できます。
クレジットカードは、毎月の締め日までに利用した分を翌月末などに支払う仕組みであるため、うまく利用すれば、支払期日に余裕を持たせることができます。場合によっては、支払いまでに数十日の余裕を持たせることも可能です。
■ クレジットカード決済のイメージ
経費の支払いを先延ばしするために、事業経費支払い用のクレジットカードの利用も検討しよう
農業の運転資金は播種期前後に必要になりますが、売上代金は収穫期以降にならなければ得られません。農家の資金繰りは、播種期から収穫期までのサイクルを念頭に、1年単位で計画を立てることが重要です。
JAや仕入先の事業者で、農家のキャッシュフローの特色に沿った決済方法が利用できる場合は、収穫期まで運転資金の支払いを猶予してもらえるケースもあります。しかし、それらのサービスが利用できない場合は、事業経費支払い用のクレジットカード(ビジネスカード)を利用するのもおすすめです。
農業にかかる費用の支払いをすべてビジネスカードで決済すれば、「いつ、何に、いくら払っているのかが明確になる」「会計ソフトと連動させることで、経理事務が効率化できる」といったメリットもあります。
農家の方向けのビジネスカードとしておすすめなのが「JAビジネスカード」です。ソリマチが提供する農業に特化した会計ソフト「農業簿記」との連携も可能なカードで、「BizPay 請求書カード払い」によってカード払いを受け付けていない販売店でもカード払いが利用できます。ぜひご検討ください。
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