コラム・事例集

公開日時
2018/10/26 08:00:00

【施設園芸・ハウス】土づくりと土壌診断⑤  施設栽培の土壌管理ーその1ー

この記事の執筆者
全農 営農・技術センター 肥料研究室

1.塩類の集積と除塩方法

施設栽培では長期にわたって多肥栽培されることが多いうえに、雨により肥料成分が溶脱されることもないので、土壌中に溶けていた肥料由来の塩類(アンモニア、カルシウム、カリウムなど)は表層が乾くことによる土壌水分の上昇によりしだいに表層に集積していきます。土壌溶液中の塩類濃度が限界を超えると、作物は葉色が濃くなったり、日中にしおれたり、ひどいときには枯死しますが、これを塩類濃度障害といいます。
塩類の集積を回避するには、土壌のEC(電気伝導度)や土壌に残存している陽イオン類を測定しながら合理的な施肥を行う(土壌診断)、または連作をやめて適切な作付体系に変える、さらにひどい場合には田畑輪換を実施するなど手段があります。そのほかに、塩類濃度を高めにくい肥料を選択することや、深耕して影響を緩和することも重要です。高糖度トマトなど品質向上を目的とした水分ストレス栽培は過度になると障害の発生を助長します。

塩類濃度を高めない肥料とは、必要な肥料成分以外の成分をできるだけ含まない肥料のことです。例えば、硫安(硫酸アンモニウム)は、硫酸イオン+アンモニアイオンであり、アンモニアイオンには窒素が含まれており肥料として有効ですが、硫酸イオンは使われずに土中に残ります。対して、硝安(硝酸アンモニウム)は、硝酸イオン+アンモニアイオンであり、いずれも窒素を含むため土中に残ることがありません。
このように、ストレスの少ない肥料は一般的な肥料ではないですが、意識してこのような肥料を選択することで連作の影響を緩和することができます(ちなみに、水耕肥料では必ず残存成分のない肥料を使います)。

 

また施肥量を計算するときは、目標収量を上げるのに必要な養分量から、土壌からの供給量(地力由来)や土壌に残った施肥余剰量を差し引いた量を目安とし、肥料は肥効調節型肥料や液肥など作物の生育に応じた肥料成分が供給できる肥料を使い施肥効率を高めることを意識することが重要です。しかし、いったん障害が発生してしまった場合には、表層にたまっている塩類を除去するか薄める対策が必要となります。
正しく管理するためには、塩類濃度を測定する必要があります。塩類はEC値を測定して評価しますが、これはECメーターで簡単に測定できます。その値を参考に基肥の施肥量を増減させますが、そのためには土壌診断により圃場の状態を把握しておく必要があります。ただEC値は総合的な塩類の評価ですので、例えばどの成分が特に不足しているかは判別できません。各成分ごとの詳細分析結果とEC値による簡易分析をうまく組み合わせることが重要です。
また、作物によって塩類濃度に対する耐性は異なるため、とくに塩類濃度の影響を受けやすい作物では注意が必要です。障害が心配な場合は、コマツナなど塩類濃度の抵抗性が弱い作物を指標作物として栽培してみることも有効です。

集積した塩類を除去する除塩法として、まず耕種的な方法を2つ紹介します。ひとつは窒素が多く残っている場合に有効な未分解有機物の投入です。通常、稲わらや麦わらなどC/N比が高い有機物は作物が利用可能な土壌中の窒素を低下させるため避けるよう指導されますが、窒素濃度が高すぎる場合には濃度低下に利用できます。C/N比とは窒素に対する炭素の量のことで、C/N比の高い有機物が施用されると分解微生物が増殖しその栄養分として窒素を取り込むため、作物が利用可能な窒素が減少することになります。有機物にはカリウムなど他の成分も含むため、過剰にならないよう土壌分析により的確に使用しましょう。
もうひとつは余分な栄養分を植物に吸収させる方法です。このような植物をクリーニングクロップとよび、吸収旺盛なイネ科のソルゴーなどの牧草や、生育の早いマメ科作物(クロタラリア)などが使用されます。重要なことは、塩類集積した圃場で生育させたあとはキレイに刈り取って全て外に持ち出すことです。例えばソルゴーを3ヶ月生育させると、ECが1.0mS/cmだったものが問題のないといわれる0.5 mS/cmまで半減した報告があります。ただこれも次作のために施肥する場合は、必ず土壌分析をして成分のバランスや過不足を確認して必要量を見極める必要があります。
さらに強制的に塩類を排除するには、天地返しや深耕が効果的です。例えばバックホーなど特殊機械を利用し、0~30cmまでと30~60cmの土層を入れ替えることができ、結果的に60cmの深耕ができます。ただ30~60cmの下層は上層に比べほとんど肥料成分がない状態であり、またpHが大きく異なるなど、これまでと同様の土壌管理や肥培管理では全くうまくいかないケースがあるので慎重にすすめましょう。また塩類集積した土層をはぎ取って、圃場外に持ち出し、新たに素性のわかっている良質な土壌を入れる方法もあります(排土と客土)。これらはいずれも土木工事となり大きなコストや労力がかかりますが、抜本的な対策としては非常に有効です。



2.ガス障害の発生原因と対策

施設栽培は露地野菜と異なり栽培中は外気と遮断されているため、ガス障害の発生がおきやすくなります。代表的なガス障害には、①アンモニアガス(NH3)、②亜硝酸ガス(NO2)、③亜硫酸ガス(SO2)などがあります。

アンモニアガスは、有機質肥料や未熟な有機物を多量に施用した場合、有機物の分解によってできたアンモニアガスが土壌中にたまりますが、そのとき施設内温度が急激に上昇するとアンモニアがガス化し土中から放出されます。アンモニアガスは作物の気孔から体内に入って細胞の酸素を奪うため、被害が急激で葉が黒ずんで萎凋します。アンモニア態窒素を含有する肥料を多量に施用したり、また石灰質や苦土質などのアルカリ性肥料を土中に混和した場合にもアンモニアガスが発生する危険性があります。
亜硝酸は有機物の分解過程で作られ、有機物がアンモニアとなりそれが酸化されてできる物質です。通常はすみやかに酸化を受け硝酸イオンとなって植物が根から吸収しますが、窒素施肥が過度に多い場合、また有機物が多投入された場合には土壌中に蓄積されます。このときpHの低下やハウス内温度が上昇することで亜硝酸がガス化され障害がおきます。
また、ハウスの暖房に使用する灯油や重油などの排気ガスが、ハウス内の作物を害することがありますが、それは排気ガスに含まれる亜硫酸ガスが原因です。
そのほかのガスによる障害を含めて、その対策について2表にまとめていますのでご参考ください。


     
    

全農 営農・技術センター 肥料研究室
農業技術センターの設立と同時に肥料研究部が発足し、肥料研究室と名称が
変わって現在に至っています。その間一貫して、全農が取り扱う肥料や土壌改
良資材、育苗培土などを有効に活用する新しい施肥技術の試験研究やそれらの
品質を適宜チェックすることで、確かな品質のものを安心して使っていただき、
農業生産のお役に立つことを目指してきました。さらに土壌分析器をはじめと
する各種ツールを活用して、土壌診断にもとづく土づくりの普及や適正施肥の
実践を進めています。



当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されております。

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