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出資のメリット
出資とは、会社の株式や持分として資金を出してもらうことで資金調達をする方法です。出資を受けられるのは法人に限られ、個人事業主では出資を受けることはできません。
出資のメリットは4つあります。
1つ目は補助金・助成金と異なり、資金使途に制約がないことです。農業経営のために使う限り、設備投資の資金としてはもちろん、運転資金として手元に置いておくこともできます(ただし、投資契約においてあらかじめ使途を定めた場合を除く)。
2つ目は出資金は資本金又は資本準備金として貸借対照表上では純資産として計上されるため、自己資本が充実して財務内容が改善されることです。
3つ目は自己資本の増強と、外部から投資を受けているという事実により対外信用力が向上し、融資が受けやすくなることです。
4つ目は借入金のように定期的な返済が不要なこと、そして利息の支払いがないことです。その代わり、利益が発生した場合に限り出資者に対して配当を行うことになります(配当は赤字決算で利益剰余金もない場合は発生しません)。
出資の事務フロー
「農業漁業法人等投資育成制度」を活用したいと考えた場合、アグリビジネス投資育成(株)(以下、アグリ社という)か投資事業有限責任組合(以下、LPSという)へ申し込みます。例えばアグリ社であればJAや信連、農林中央金庫の支店へ、LPSであれば注1の連絡先へお問い合わせください。
面談の際は、会社の経営状況がわかる「直近3年分の決算書」「今後5年間の事業計画」「農業経営改善計画認定書」などの書類をあらかじめ準備しておくと相談がスムーズに進みます。さらに会社の「定款」「履歴事項全部証明書」「農地所有適格法人報告書」なども手続きを進めるのに必要ですので、提出できるよう準備しておくと良いでしょう。
出資を受けるまでの流れは会社法人(株式会社、持ち分会社等)では下図のようになり、アグリ社では会社法人の場合、出資の相談をしてから投資条件の交渉を終えるまでに2〜3か月、投資決定から実行が完了するまでにさらに2〜3か月がかかるとされています(注2)。
農事組合法人の場合、出資に際しては労働の対価の支払い方法、余剰金の配当など検討事項が多く、議決権は1人1票制であることから、会社法人の場合より組合員の意思確認・合意形成に時間が掛かることが多くあります。また、実務面では定款で組合員の資格が定められているため、アグリ社が組合員となれるよう定款の変更も必要となります。
出資は借入と比較すると書類の準備や手続きに時間を要する場合が多く、短期間での資金調達には向きません。また、出資に係る費用は、決算時期に発生する配当の他、増資や発行可能株式数の登記変更に伴う費用、専門家に増資の手続きを依頼する場合はその費用などがあります。
出資を受けた後はアグリ社やLPSに対して定期的に経営状況を報告する必要があります。経営に大きな影響がある経営判断を行う場合は、出資者に対し事前に相談することも求められます。また、経営実績に応じて、利益額に応じて出資者へ配当を行います。
新規事業などへの投資など資金回収が長期になる場合や、設備投資の借入れによって低下した自己資本比率を改善したい場合などには、出資による資金調達を選択すると良いでしょう。
参考
(注1)農水省「農林漁業法人等投資円滑化法に基づく事業計画承認に係る投資会社・投資組合リスト(令和4年11月1日現在)」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/kinyu/toushiikusei/daijinsyounin2.html
(注2)アグリウェブ コラム「『出資』の手続き」
https://www.agriweb.jp/column/937.html
当該コンテンツは、「アグリビジネス・ソリューションズ株式会社」の分析・調査に基づき作成されております。