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一般法人(一般企業等)の農業参入
2009年6月の農地法等の改正により、従来は、農地の権利(所有権、賃借権等)を取得できなかった農地所有適格法人以外の一般法人(一般企業等)も貸借であれば、解除条件付で全国どこでも農地の権利を取得することが可能となりました。貸借であれば、法人が農地所有適格法人の要件を満たす必要はございません。
[1] 農地法の許可を受ける方法
農地の権利を取得するための要件
一般法人が農地の貸借(賃貸借・使用貸借)により、農業に参入する場合、次の「基本の要件(個人と共通)」のほかに、次の「追加的要件」を満たすことが必要です。
<基本的な要件> ※1, 2
① 全部効率利用要件
全ての農地を効率的に利用すること(機械や労働力、技術等を適切に利用するための営農計画を持っていること)
② 地域との調和要件
周辺の農地利用に支障を与えない利用方法であること
※1 ①②の要件については、「新規就農(個人が農業参入する場合)」【Ⅰ】1基本の要件を参照のこと。
※2 基本の要件として、従来は、①、②の要件の他に、「下限面積要件」(都府県では50アール以上、北海道では2ヘクタール以上)がありましたが、本要件は、新規就農の促進を図るなどの観点から2022年の農地法改正で廃止されました。
<追加的な要件>
③ 貸借契約書に解除条件(農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること)が付されていること
④ 地域における適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営が行われること
(「適切な役割分担」:集落の話し合いへの参加、農道や水路の維持活動への参加等、「継続的かつ安定的な農業経営」:機械や労働力の十分な確保など)
⑤ 業務執行役員又は重要な使用人が1人以上農業に常時従事すること
(農業の内容:農作業に限らず、マーケティング等経営や企画に関するものも含む。)
農業委員会への許可申請
申請は、原則、貸主との共同申請が基本となります。申請書等の提出に当たり、特に、追加的要件関係事項、例えば、要件③では、解除条件付貸借契約書の写しの添付、要件④では、確認書等による地域との役割分担の担保、また営農計画等で「継続的かつ安定的な農業経営を行う」見込み、要件⑤では、業務を執行する役員等の従事状況を明示するなどすべての要件をクリアしていることを具体的に示す必要があります。
[2] 機構が作成する「農用地利用集積等促進計画」により権利を取得する方法
1 概要
この方法は、農地中間管理事業法に基づき、機構が作成し、都道府県知事が認可・公告する「農用地利用集積等促進計画」(注1)によって農地の貸借等を行うものです。促進計画は、市町村が作成・公告した地域計画の実現のため、機構が作成し、機構と出し手、機構と受け手の貸借関係をまとめた計画です。
機構が促進計画を作成するに当たっては、関係農業委員会の意見を聴くとともに、地域計画の区域内の農地については市町村、それ以外のものについては利害関係人の意見を聴き、その結果を付して、都道府県知事に認可を申請します。
都道府県知事は、促進計画が要件を満たすときは、認可・公告します。この公告があったときは、促進計画に基づく権利の設定等の効力が生じます。この方法による権利移動については、農地法の許可は不要です。
(注1)2022年の基盤強化促進法改正により、市町村が地域計画(目標地図を含む)を定め、その実現を図るため機構を活用した農地の集積・集約化を図ることとされました。こうした中で、公的主体が関与する農地の権利設定手続きも見直され、市町村が作成する「農用地利用集積計画」は、2025年4月から機構が作成する「農用地利用集積等促進計画」に統合一本化されることとなりました。なお、2025年3月末日(それまでに地域計画が定められ公告されたときは、その公告の日の前日)までは経過措置として、市町村の「農用地利用集積計画」も引き続き活用可能とされていました。
2 機構から農地を貸借する手続き
① 一般法人が、機構から賃借権の設定を受けたいときは、就農希望地の市町村(農業委員会)に(又は機構に直接に)申し出て、機構に農用地利用集積等促進計画を作成してもらうことになります。
② 機構は、地域計画の区域内の農用地等について促進計画を定める際には地域計画の達成に資するようにしなければならないとされています(基盤強化促進法22の5)。したがって、機構が促進計画により、農用地の賃借権の設定等を行う場合は、その受け手が地域計画(目標地図)に「農業を担う者」として位置付けられている(又は位置付けられる見込みがある)必要があります。
この確認等のためにも、先ず、市町村又は農業委員会に事前に相談されることが重要です。(地域計画は一度策定して終わりではなく、策定後も地域農業の実情に応じて随時 変更をしていくこととされています。)
③ 機構は、地域計画の実現のため、目標地図に即して、出し手・受け手の希望条件を踏まえて、貸借の開始時期、貸借の期間、借賃、借賃の支払い方法等について調整を行い、調整後、機構は促進計画を作成することとなります。(多くの機構は月1回以上の促進計画を作成するとしているなど、農業者の意向に即し柔軟な対応ができるようになっています。)
④ 機構は、促進計画の都道府県知事の認可・公告を経て、受け手に対して農地を貸し付けることとなります。公告があったときは、促進計画の定めるところにより賃借権の設定等がなされたものとみなされます。促進計画による権利の設定等に関しては、農地法第3条第1項の許可は不要です。
⑤ 機構から申請を受けた都道府県知事は、促進計画の認可に当たり、受け手については次の要件を満たしているかどうかをチェックすることとなります。受け手要件としては次のことが定められています(中間管理事業法18 ⑤)。
ただし、一般法人については、ア及びウの要件が適用されます。
ア 賃借権設定等を受けた後、農地の全てについて効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められること
イ 耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すること(本要件は、農地所有適格法人には適用されません。)
ウ アに規定する者が賃借権の設定等を受けた後に、イの農作業従事要件を満たさない場合は、次の要件を満たす必要があること
a 地域の他の農業者との適切な役割分担の下に継続的安定的な農業経営を行うと見込まれること
b その者が法人である場合には、業務を執行する役員又は重要な使用人の一人以上が耕作又は養畜の事業にすると見込まれること
⑥ 都道府県知事の認可要件に関連し、機構が促進計画を作成するに当たっては、受け手に次の書類の用意をお願いする場合もあります。ご理解ください。
- 現に使用収益等している農地の利用状況
- 耕作に必要な機械の所有の状況
- 権利設定等を受ける法人の業務執行役員等の状況、地域における他の農業者との役割分担等の状況
いずれにしても、農地を買ったり借りたりする場合は、就農予定の市町村又は農業委員会に事前にご相談ください。また、機構にも相談窓口が設置されていますので、お気軽にお問い合わせください。
(参考)一般法人(リース法人)の農業参入の動向

農地を利用して農業経営を行う一般法人は、2023年1月1日現在で4,121法人となっています。2009年の農地法改正によりリース方式による農業参入が全面自由化されたため、1年当たりの農業参入法人数は改正直後の427法人から約9.6倍に増えています。
参入リース法人(4,121法人)の農業参入の動向をみると、法人形態別では、株式会社としての参入法人数が2,690法人と全体の65%を占めています。業種別では農畜水産業1,536法人(37%)、食品関連産業585法人(14%)、サービス業524法人(13%)、建設業385法人(9%)で過半を占めています。
次に、営農類型別では、野菜1,617法人(39%)、米麦作950法人(23%)、果樹698法人(17%)などとなっており、野菜経営を行う法人の割合が高くなっています。
また、借入農地面積の規模別法人数を見ると、1ha未満が2,243法人(55%)、1ha以上5ha未満が1,242法人(30%)、5ha以上20ha未満が493法人(12%)、20ha以上が143法人(3%)となっています。リース法人の借入面積の合計は、15,295ha、1法人当たりの平均面積は3.7haです。
当該コンテンツは、「一般社団法人 全国農業会議所」の分析に基づき作成されています。
