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1.輸出における価格
輸出においては、商流に輸出商社やインポーターが入ることによって、最終的な消費者への提示価格は国内よりも上昇することが一般的です(下図)。
直接輸出の場合であっても、単純な物流費が国内より上昇するため、販売価格は国内よりも高くせざるを得ません。基本的に、東南アジアであっても、国内価格の2倍〜3倍の店頭価格になることが多いです。
したがって、価格を考える上では、商品を販売するマーケットをどこに置くか、ターゲットの選び方と販売するチャネルの選択が非常に重要です。
スーパーマーケットのような小売店頭向けは難しくても、高級料理店など業務用向けなら販売が見込めるといった商品も少なくないためです。
2.価格検討のための現地調査
輸出において価格に悩んだときは、輸出先現地の価格調査を実施することが効果的です。
調査といっても難しいものではなく、店頭に行って、自社の商品が入るであろう売場の他の商品の価格を見てくれば良いのです。飲食店などであれば、メニューを見れば多くの場合、価格が記載されています。
具体的に価格調査の手法を説明します。
まず、商談がうまくいった場合に、自社の商品が置かれるであろう売場に行き、そこに陳列されている商品とその価格をメモします。
次に、そのメモをもとに、下図のようなグラフを作成し、例えば「160円の商品は2種類、170円の商品は3種類・・・」といったように、価格ごとに、商品数をカウントします。
そうすると図のような山なりのグラフが描けるはずです。どのような小売業であっても、品揃えの中心になる価格帯が存在しているためです。
価格調査で使われる用語として、以下の3つがあります。
① プライスライン
売価の種類(一般的に、売価の種類は、商品の種類数よりも少ない)
② プライスゾーン
価格の上限と下限の範囲(売場の価格の上限・下限)
③ プライスレンジ
プライスゾーンのなかで、他の価格商品よりも多く扱われている価格帯(メインの価格帯)
現在の価格分布(プライスゾーン)の中に入らない価格設定であれば、当該店舗に導入してもらうのは困難です。その場合には、容器容量の見直しや、廉価版商品の展開などにより、プライスゾーンに合わせていくことが必要となります。
また、プライスゾーンのうち、自社で販売しようとしている商品と同じ価格帯に属している商品は、基本的に競合商品となります。競合との差別化に向けて、自社の"売り"を開発しましょう(ポジショニング検討:基礎知識「輸出のマーケティング」参照)。
なお、一般的にプライスレンジが低い価格帯にある売場は、全体的に価格が安い印象を消費者に与え、プライスレンジが高い価格帯にある売場は、全体的に価格が高い印象を与えます。ディスカウント店は前者、高級店は後者のような品揃えになっています。
輸出現地の価格感を知るうえで、公益財団法人国際金融情報センターの「各国の物価水準」(https://www.jcif.or.jp/)が非常に有用です。各国で物価に差があり、品目によっては日本より高いケースもあることが分かります。こうしたデータをもとに、流通事情や文化的な背景を読み取り、輸出の可能性を考えることが重要です。
当該コンテンツは、公益財団法人 流通経済研究所 農業・地域振興研究開発室 折笠室長の分析に基づき作成されています。