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(熊本県『天草農工房ふぁお』筒井洋充)
地方の農村エリアには、移住者の新規就農を支援する仕組みがあります。しかし、せっかく支援しても、数年で帰ってしまう人も少なくありません。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。今回はこの連載の本質的な部分である、若い就農者が定着しにくい理由について私なりの見解をお伝えしていきます。
なお、私は移住と就農を同時に行ったIターンであり、本記事は個人の経験に基づいた経験談です。Uターンの場合は別の可能性がある点をお断りしておきます。
新規就農者に立ちはだかる「お金」と「人間関係」の壁
地域おこし協力隊をサポートする、とある団体に聞いた話です。移住者が定着しない背景にはさまざまな要因がありますが、カテゴリーは2つに分けられるといいます。1つはお金の問題、もう1つは人間関係の問題です。
1つ目のお金の問題の根底にあるのは、農産物でお金を稼ぐことの難しさと、補助金を活用しようとするがために過剰投資が生まれ、経営の重荷になっていることだと私には思えます。お金の問題については、こちらの記事をご覧ください(過去記事リンク:「その補助金いるの?」10年前の自分に伝えたいこと)
2つ目の人間関係の問題は、コミュニケーションの問題と言い換えることもできるでしょう。たとえば、私がお世話になっていた認定農業者のところには、私のほかにも研修生がいました。しかしケンカ別れして新規就農者の認定を取ることをあきらめてしまった人もいますし、就農そのものをあきらめて元いた場所に戻ってしまった人もいます。
こうした場合、多くは「若い人は根性がない」といった具合に、原因は研修生側にあるととらえられるのですが、私はその見方こそが問題だと思います。なぜなら、何が問題だったのかを深ぼりしていないからです。コミュニケーションは相手がいて成り立つものですから、基本的にどちらかが一方的に悪いことはありえません。つまり、預けた側・受け入れ側にも問題があったかもしれないということです。