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(熊本県『天草農工房ふぁお』筒井洋充)
はじめまして。筒井洋充と申します。熊本の天草でデコポンのブランド名で知られる柑橘を栽培しています。
前回は作りたいものが決まっているなら、「場所は作りたいものを作っているところで」という話をしました。反対に、就農場所が決まっているとき、作るものはどのように考えればいいのでしょうか。
「そこにあるもの」を作るメリット
「農業をしたい」と思っていても「どこで」「何を作るか」決められない人はめずらしくありません。私のところにも移住や就農希望者の方が相談に来ることがあります。そんなとき思うのは、まずは何か1つを決めた方が考えやすくなるのでは?ということです。
先に場所が決まっている方なら、「そこにあるものを作りなさい」と私はアドバイスします。たとえばJAあまくさの2023年のディスクロージャーによると、取扱実績(金額別)の1位は「果実」、2位は「畜産物」でした。果実は実質的に柑橘を指しています。
つまり、天草は柑橘か畜産なのです。このどちらかなら、ノウハウも設備も整っていますから、ゼロからはじめる必要はありません。私のように辞める方を引き継げる可能性もあります。初期投資も抑えられるので、脱サラ組にとって現実的な選択肢になるのではないでしょうか。
自分ひとりでできることは限られているものです。自分で環境を作ったり、整えたりするのはかなり大変ですから、適した環境を選ぶことも必要だと私は思います。脱サラ組は就農という点では何かと不利ですが、あれこれ選べるという点では、脱サラ組の方がおもしろいかもしれません。
3つのケース別に見る土地探しの方法
続いて「ここに住みたい。けれど就農のための土地が見つからない」そんな方に向けて、3つのケースでお話ししたいと思います。いずれもその地域にコネがない前提です。
ケース① 農業することは決めている・しっかりやりたい
認定農業者になることを目指しましょう。自治体の窓口で相談してみてください。新規就農のための支援制度や土地取得の案内まで手厚くサポートしてくれるはずです。
ケース② まずは他の仕事をしながら様子見したい
農業を仕事にするかは決めていない方は、その地域で働きながら徐々になじんでいくのがいいと思います。地域とのネットワークを作りたい場合は、地域おこし協力隊になるという方法もあります。
ケース③ 農業は副業でOK
ライターやプログラマーなど特定のスキルのある方や、テレワークで仕事をしている方の中には農業はしたいけれど副業でいいという方もいるかもしれません。家庭菜園より広い土地を借りたい場合は、ネットワークがないと難しいことも多いので、やはり地域活動に参加しながら少しずつなじんでいきましょう。
「農業をしたい」と言っても、そのスタイルは千差万別です。作るものによって働き方は変わりますし、専業なのか兼業でしたいのかによっても、条件は変わってきます。まずはどんな暮らしをしたいのか、どんな働き方をしたいのかをじっくりと考えることが、はじめの一歩につながるはずです。
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